2019年度は、①細菌叢簡易評価法を改良し、腸内細菌叢への②運動による影響評価、と③高脂質食摂取による影響評価、への適用を行った。 ①に関し、最終的にはT-RFLPデータの「視覚的要約」と「統計解析(検定)」を組み合わせて簡易評価法とした。視覚的要約において使用することとした階層クラスター分析においてこれまでユークリッド距離を用いていたが、T-RFLPの測定データが各断片塩基長の検出強度であることから、各分析において類似度指数を用いることとした。また比較解析時には、時間固定での個体比較、および個体固定での時間比較、という2種類のアプローチで評価を行うこととした。 ②、③に関し、マウスに対し走行運動負荷を7日間継続したところ、視覚的比較では試験開始2日後に各個体の腸内細菌叢が運動群と非運動群の各グループに分かれ、その後次第に両グループの差が消失する傾向が見受けられた。マウスに対し高脂質食の摂取を7日間継続したところ、試験開始1~2日後にコントロール群と高脂質食摂取群の各グループに分かれているように見受けられたが、運動負荷時ほどグループ形成は明瞭でなく、グループ差の消失も運動負荷時よりも速やかな傾向が見受けられた。検定では運動負荷条件が試験開始後2日目に、高脂質食摂取条件では試験開始後1日目に有意に影響を及ぼしていることが明らかとなった。 以上より、改良した細菌叢簡易評価法を用いることで、様々な要因が腸内細菌叢に及ぼす影響の有無を特にタイミングの観点から迅速に評価することが可能となった。この方法を用いることで菌叢の短期的変化を見逃さずに変化タイミングのスクリーニングが可能となる。しかし、菌以外にも腸内環境を構成する要素は多く存在するため、今後はそれらを含めた腸内環境としての比較法への発展を目指していきたい。
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