研究課題/領域番号 |
16K16612
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研究機関 | 摂南大学 |
研究代表者 |
石丸 侑希 摂南大学, 薬学部, 助教 (80611607)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 糖尿病網膜症 / Apelin / APJ / VEGF / 血管新生 / 虚血性網膜症 |
研究実績の概要 |
糖尿病網膜症を発症すると、病態悪化に伴い網膜に脆弱な新生血管が生じ、これらの破綻が原因となり失明に至る。現在、この異常な血管新生を抑制する治療法として、血管内皮増殖因子(VEGF)に対する阻害療法が用いられているが、異常血管のみならず正常血管にも障害を与えることが知られていることから、異常血管新生を特異的に抑える新たな治療法の開発が必要である。これまでに我々は、異常網膜血管新生が誘導される虚血性網膜症マウスモデルを用いた研究から、生理活性ペプチドであるapelinのAPJ受容体を介したシグナルが異常網膜血管新生に必須であることを明らかにしている。これらを背景に、今年度では、唯一ヒト糖尿病網膜症病態に類似した病変がみられる糖尿病モデル動物であるSDTラットを用いて、糖尿病網膜症の病態形成とそれに伴うapelinおよびAPJの発現解析を行った。加えて、異常血管新生に対するAPJ阻害剤の効果を検討する目的で、急性に異常血管新生を誘導できる虚血性網膜症マウスモデルを用いて検討を行った。これらの動物モデルを用いた検討から、長期飼育したSDTラットの網膜では、網膜血管の安定化に必要な血管周皮細胞の脱落がみられるなどの病変がみられ、この現象に伴い、網膜のapelin発現の増加がみられた。SDTラットの網膜におけるAPJは、血管内皮細胞を取り巻く細胞に発現がみられた。また、APJ阻害剤は、VEGF阻害剤と比較して、虚血性網膜症マウスモデルの網膜で生じる異常血管新生を特異的に抑制した。これらの結果は、糖尿病網膜症の病態形成にapelinが関与する可能性と、APJ阻害剤が既存の治療薬と比較して効果的に異常網膜血管新生を抑制できる可能性を示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
SDTラットの網膜において、病態形成に伴いapelinの発現上昇がみられること、また、APJ阻害剤が虚血性網膜症マウスモデルの異常血管新生を特異的に抑制することをはじめて明らかにしたことから、概ね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
SDTラットにAPJ阻害剤を投与し、その治療効果について、病理学的解析および機能学的解析により評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度に成果を上げるためには、使用予定のAPJ阻害剤やSDTラットが大量に必要となる。
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次年度使用額の使用計画 |
APJ阻害剤とSDTラットの購入に充てる。
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