研究課題/領域番号 |
16K16614
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研究機関 | 国立研究開発法人国立国際医療研究センター |
研究代表者 |
宇田川 陽秀 国立研究開発法人国立国際医療研究センター, 代謝疾患研究部, 上級研究員 (50533882)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 内臓脂肪 / 皮下脂肪 / 間質血管分画 / ASC / 脂肪前駆細胞 |
研究実績の概要 |
本研究ではマウスの大網、精巣上体、腸間膜、皮下の4種の脂肪組織を摘出し、各組織および脂肪組織と間質血管分画[SVF]の遺伝子発現プロファイルを明らかにして、ヒトのデータと比較するとともに、肥満・糖尿病の病態に関わる意義について探索した。 まず、高脂肪食マウスと肥満糖尿病モデルob/obマウスから、大網脂肪、精巣上体脂肪、腸間膜脂肪、皮下脂肪の4組織を摘出し、ヒト内臓脂肪で発現が優位であった遺伝子群の定量PCRをおこなった。ヒト内臓脂肪で優位であった遺伝子群はマウスでも同様に内臓脂肪において優位であることが認められた。次に、高脂肪食マウスの4箇所の脂肪組織から脂肪細胞とSVFに分離し、ヒト内臓脂肪に優位な遺伝子群の発現パターンを確認した。その結果、内臓脂肪優位遺伝子の多くは、脂肪画分に比較してSVFに優位であった。それら遺伝子の発現は、コントロールマウスに比較して、高脂肪食マウスやob/obマウスにおいて低下した。さらにSVFに含まれるAdipose-derived stromal/progenitor cells (ASC)を培養し、分化誘導をかけ8日目にRNAを抽出し内臓脂肪優位遺伝子群の発現パターンを定量PCRにて評価した。その結果、内臓脂肪優位遺伝子群の多くは、脂肪細胞への分化誘導前のASCに発現しており、脂肪細胞への分化により発現が低下した。従って、我々が候補とした遺伝子群の多くは、内臓脂肪組織の中で脂肪前駆細胞に発現し機能している可能性が示唆された。現在、次年度に進める予定であったin vitro解析を前倒しし、内臓脂肪優位の遺伝子群の中で、数種類の転写因子についてドキシサイクリン誘導性の安定発現細胞株の作成を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在、マウス脂肪組織4種類の遺伝子発現パターンを解析し、候補遺伝子の抽出や、解析を進めている。次年度に計画していた数種類の候補遺伝子における安定発現細胞株の樹立および機能解析にかなりの時間がかかるので、前倒しして進めている。当初目的としていた、大網脂肪組織に焦点を当てた検証が遅れているので、次年度に進めて行きたい。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度は、ヒト内臓脂肪に優位な遺伝子のマウスにおける各種脂肪組織での発現パターンを明らかにした。さらに現在、数種類の転写因子に着目し、ドキシサイクリン誘導性の安定発現細胞株を作成中である。今後は、安定発現株の脂肪機能関連遺伝子の発現や脂肪合成能などで機能を評価する。評価にはIN Cell Analyzerを用いて、分化誘導効率、脂肪滴サイズ、脂肪滴密度、核サイズ等について詳細なin vitro解析をおこなう。また、分化誘導関連遺伝子や脂肪細胞機能関連遺伝子の発現を定量PCRにて測定する。脂肪細胞機能に関連しうる転写因子が同定された際には、ターゲット遺伝子の抽出およびルシフェラーゼアッセイやクロマチン免疫沈降 (ChIP) アッセイを用いて、転写調節領域の同定を行う。また、遅れている大網脂肪細胞の機能に着目した解析を進める。 内臓脂肪で発現が優位な候補遺伝子のうち、分泌タンパク質でELISAなどの定量測定が可能な分子については、肥満・糖尿病モデルob/obマウス、高脂肪食マウスの血清中の濃度を測定する。さらに、高度肥満患者減量手術症例の術前、術後1、6、12ヶ月の血清中の濃度を測定する。 一連の解析から、肥満および糖尿病における意義が強く想定される注目遺伝子について、遺伝子改変マウスの作成に着手する。さらに、候補遺伝子の解析に適した脂肪細胞特異的遺伝子改変マウスを作成し、肥満・糖尿病状態における機能を解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究では、マウスにおける大網脂肪組織の機能解析を計画したが、in vitroの系を構築する事を優先し 大網脂肪組織能機能解析は来年度に延期したことから、予算も次年度へ繰り越しすることとした。
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次年度使用額の使用計画 |
in vitroでの機能解析の為に、IN Cell Analyzer解析や定量PCR試薬等に使用する。さらにChIPアッセイ試薬や抗体を購入する。またin vivoでは肥満・糖尿病モデルマウスの購入や、機能解析の為の試薬に使用する。
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