研究実績の概要 |
胎児期のフタル酸エステル類の曝露評価を、母の妊娠初期の血液を用いてLC-MS/MS法で分析した。具体的には7種類のフタル酸エステル類代謝物濃度(MiBP, MnBP, MBzP, MEHP, MECPP, MEHHP, cx-MiNP)を測定し、濃度分布から本研究の対象者の胎児期のフタル酸エステル類への曝露の実態を明らかにした。本研究の対象者では、MBzP, MECPP, cx-MiNPの検出率が非常に低く、これらの物質への曝露は少ないと考えられた。一方、日本での使用量が多いとされるDEHPの代謝物である、MEHPやMECPPについては高い検出率であった。最も濃度が高く検出されたのは、MnBPであった。 すでに先行して進めている出生コーホート研究の結果を用いて、フタル酸エステル類の胎児期曝露と出生時の体格、体格や発育のバイオマーカーとされる臍帯血中のアディポサイトカイン(レプチン、アディポネクチン)の関連を検討した。 フタル酸エステル類(DEHP)の胎児期曝露は、特に女児において臍帯血中のレプチン濃度の低下と、出生時の体格指数の低下と関連することを報告した。男児においては、DEHPの胎児期曝露は臍帯血中のアディポネクチン濃度の増加と関連することを報告した。 先行する出生コーホートで、生後の子どもの体重や身長などの追跡データを用いて、胎児期のDEHP曝露が子どもの発育に影響を与えるかを、引き続き検討中である。
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