研究実績の概要 |
胎児期(妊娠初期)のフタル酸エステル類、7種類(MiBP,MnBP,MBzP,MEHP,MECPP,MEHHP,cx-MiNP)の曝露評価を実施し、本研究対象者の妊婦ではフタル酸エステル類への曝露があることを明らかにした。さらに、曝露評価のデータを用いて臍帯血中アディポカイン(アディポネクチン、レプチン、IL-6、TNF-α)濃度との関連を検討した。これらのアディポカインは、脂肪細胞から分泌される生理活性物質で、肥満に関係するバイオマーカーとして知られており、また一部は炎症マーカーでもある。 母親の妊娠初期の血液中のフタル酸エステル類(DEHP)代謝物のMEHP、MECPP濃度、および代謝物の総和の増加は、臍帯血中レプチン濃度の減少と関連していた。同様に、フタル酸エステル類(DBP)代謝物のMiNP、MnBP濃度の増加は、臍帯血中レプチン濃度の減少と関連していた。子どもの性別で層別に解析をおこなったところ、DBPの曝露については男児、女児での影響の大きさの違いはみられなかったが、DEHPの曝露については、女児で男児よりも大きな影響がみられた。 一方、レプチン以外のアディポカイン濃度は、母の血液中のフタル酸エステル類濃度とは関係していなかった。この結果は、先に別集団を用いて行った研究で報告をした結果と同様であり、さらなる科学的知見の追加となった。 現在は、アディポカインなどバイオマーカーに加えて、子どものBMIや体脂肪率、皮下脂肪厚、血圧とフタル酸エステル類濃度が関連しているかを検討中である。
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