研究課題/領域番号 |
16K16621
|
研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
水野 賀史 福井大学, 学術研究院医学系部門(附属病院部), 医員 (50756814)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 注意欠如多動症(ADHD) / 安静時機能的MRI(rs-fMRI) / COMT / 実行機能 / 小脳 |
研究実績の概要 |
注意欠如多動症(ADHD)の神経基盤を解明するため、ADHD児、定型発達(TD)児に対して安静時機能的MRI(rs-fMRI)を撮像し、さらに、遺伝子との関連についても合わせて検討した。以下にその成果の概要を示す。 ADHDにおいて、実行機能障害は広く知られた要因である。小脳のCrus I/IIは前頭葉とネットワークを作り、実行機能に関係している。一方、catechol-O-methyltransferase(COMT)の遺伝子多型Val158Met(rs4680)はドパミンに影響して実行機能に関係している。そこで我々は、ADHD児では実行機能に関係する大脳皮質-小脳ネットワークに異常がみられ、さらに、COMT遺伝子多型がそのネットワークに関連している、という仮説をたて、その検証を行った。 31名のADHD児(9.7±2.0歳)と30名のTD児(10.6±2.2歳)に対してrs-fMRIを撮像した。小脳のCrus I/IIをseedとして機能的結合を解析し群間比較を行った。ADHD児からCOMT Val158Met遺伝子多型データを得て、ADHDに関連する機能的結合についてMet-carrier群(n=16)とVal/Val群(n=15)とで群間比較を行った。 TD児に比べて、ADHD児では右Crus I/IIと左背外側前頭前野の機能的結合が有意に低かった。さらに、ADHD児においてその機能的結合はCOMT遺伝子多型と関連しており、Met-carrier群はVal/Val群に比べて有意に低かった。 これらの結果は、COMT遺伝子多型が大脳皮質-小脳の神経ネットワークに影響し、それが実行機能に影響することを示唆し、ADHDの多様性を反映していると考えられる。脳画像と遺伝学的検討をリンクさせる研究の推進により病態を標的とした先進的治療の開発につながるかもしれない。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度に予定していた、ADHD群とTD群のrs-fMRIを比較する研究Iについては、順調に被験者のリクルートをすることができ、rs-fMRIの撮像に加え、さらに、遺伝子データを採取し、データを解析した。その研究の成果については学会で発表し、現在学術誌に論文投稿中であり、すでに一定の成果をあげている。また、平成29年度に予定している、ADHD治療薬内服前後のrs-fMRIを比較する研究IIについても、倫理審査の申請を行い、近々被験者リクルートを開始し、rs-fMRIの撮像を開始するために準備をすすめている。
|
今後の研究の推進方策 |
ADHD治療薬内服前後のrs-fMRIを比較する研究IIについて現在準備をすすめており、近々被験者のリクルートを開始する予定である。2017年度中にリクルートを終え、データ解析を行う予定である。科研費の研究計画申請時は、ADHD治療薬の投与に際してオープン試験を行う予定で考えていたが、バイアスの影響を少なくしてより質の高い研究とするため、プラセボを対照とするランダム化二重盲検クロスオーバー比較試験に変更して行う予定であり、プラセボ内服時と治療薬内服時に撮像したrs-fMRIの画像データを比較し解析する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
A-DOS2日本語版スタートセットの購入を検討し、物品費として計上していたが、他の研究室で使用していたものを借りることができたため、購入する必要がなくなったことが理由の一つである。また、最終年度において、今後の推進方策を遂行するために使用する必要がある。
|
次年度使用額の使用計画 |
取得した画像データの解析を行うためのソフトウェアの購入、最新の情報を得るため、成果を発表するための学会参加費、旅費や、被験者、研究協力者に対する謝金に対して主に使用する予定である。
|