研究I. 注意欠如多動症(ADHD)児の神経基盤解明を目的として、ADHD児と定型発達(TD)児に対して安静時fMRIを撮像し、さらに、遺伝子との関連についても合わせて検討した。31名のADHD児(9.7±2.0歳)と30名のTD児(10.6±2.2歳)に対して安静時fMRIを撮像し、機能的結合の群間比較を行うのと共に、ADHD児からCOMT Val158Met遺伝子多型データを得て、ADHDに関連する機能的結合についてMet-carrier群(n=16)とVal/Val群(n=15)とで比較を行った。その結果、TD児に比べて、ADHD児では右小脳Crus I/IIと左背外側前頭前野の機能的結合が有意に低く、さらに、ADHD児においてその機能的結合はCOMT遺伝子多型と関連しており、Met-carrier群はVal/Val群に比べて有意に低いことが明らかとなった。これらの結果は、COMT遺伝子多型が大脳皮質-小脳の神経ネットワークに影響し、それが実行機能、ADHDの症状に影響していることを示唆する。脳画像と遺伝子の関連を検討する研究(imaging genetics)の推進により個々の病態に応じた新規の客観的な診断・治療法の開発につながる可能性がある。この成果は学会・論文で発表するのと共に、著書・総説でも紹介し、プレスリリースも行った。 研究II. ADHD治療薬であるメチルフェニデートの神経ネットワークへの影響を検討するため、安静時fMRIを用いて、ADHD児33名(9.9±1.7歳)に対してプラセボを対照とするランダム化二重盲検クロスオーバー比較試験を行った。現在リクルートを終了し、データの解析中であり、この結果も論文等で発表していく予定である。
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