研究課題/領域番号 |
16K16622
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
島田 浩二 福井大学, 子どものこころの発達研究センター, 特命助教 (00711128)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 子ども環境学 / 子育て / 養育ストレス / 社会性 / 社会脳 / 社会神経科学 / fMRI / 脳イメージング |
研究実績の概要 |
現代ストレス社会の問題の1つに養育困難や養育失調(最悪な事態として自殺や虐待)がある。たとえどんなに子ども思いの養育者であっても,体の疲れだけではなく,目に見えない心の疲れの蓄積から養育困難・失調に陥ってしまうリスクの線上にいると考えられる。養育者の健全養育の維持や促進を導くため,また,養育上の深刻な事態を招かないためにも,養育者の子育て困難の背景にある認知行動および神経科学的な脆弱性の解明が必要であるといえる。本研究課題では,養育者の子育て困難の個人差に焦点を当てて,社会的情報処理の機能低下および神経科学的な基盤の解明を目指すものである。研究1では養育者の社会的認知を取り上げ,より強い抑うつ気分の人ほど,子どもではなく大人の表情から気持ちを推測する課題の遂行時に右下前頭回の活動がより低下したが,一方で,その課題成績(正答率など)に低下はなく維持されることが分かった。養育環境ストレスの深刻化に伴う育児中の共同養育者間のコミュニケーションの問題に先立って,社会脳機能が低下する前駆現象があることが示唆され,予防的指標の開発に繋がる知見といえる。また,研究2では養育者の社会的調整を取り上げ,子どもまたは大人に対して,その人が持っている物の名前を口頭で教える発話課題を遂行中の脳機能計測を行った。子どもに教えるときでは、大人に教えるときに比べて,腹内側前頭前野や背外側前頭前野の活動がより強く修飾されることが分かった。それらの脳領域が対幼児発話の産出に関与する神経基盤として重要な役割を担っていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究1では成果を関連学会に発表また国際学術雑誌に報告し,広くメディアを通して社会に発信した。研究2では成果を関連学会に発表し,データの解析から論文執筆・投稿までを完了することができた。その点で,おおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は,社会能力に関わる課題時の脳機能画像データ解析で同定された養育ストレス脆弱性の神経基盤に関して,ストレスに伴う認知行動および脳機能面の変化を縦断的なアプローチで明らかにしていく。また,養育ストレス脆弱性の背景要因としてのオキシトシン関連遺伝子やその関連遺伝子の多型やメチル化などのゲノム・エピゲノム解析にも取り組んでいく。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度の平成30年度は,複数の認知行動実験や脳科学実験を予定しており,実験装置の使用料,実験参加者への謝金など,多額の研究費用が見積もられるため,平成29年度で繰り越した金額で充填する予定である。
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