研究実績の概要 |
当該年度は幼少期の逆境体験と高齢者の手段的日常生活能力の関連について日本老年学的評価研究のデータを用いた論文が国際雑誌から出版された(Amemiya et al, 2017)。 以下に本論文の概要を記載する。幼少期に親との離別、虐待や家庭内暴力などがある状況で生活すると、生涯にわたる健康リスクがあることが知られている。今回、65歳以上の19,220人を対象に、幼少期の逆境体験と、高齢期の買物や外出など自立した日常生活を送るための高次機能との関係を分析した。その結果幼少期の逆境体験が2つ以上ある人は、逆境体験のない人に比べて、日常生活を送るための能力が低いリスクが46%高いことがわかった(性、年齢、子ども期の社会経済的状況を調整済み)。成人期以降の社会経済的状況、健康状況を調整すると1.19倍となり、成人期以降の社会環境や健康状態が66%媒介していることも分かった。 高次機能は東京都老人総合研究所が開発した自記式の高齢者用生活機能評定尺度で、手段的自立(5 項目)、知的能動性(4 項目)、および社会的役割(4 項目)の 3 要素13 項目を用いた。満点ではない状況を高次機能低下として解析した。 子どもの頃の逆境体験は、①親の死亡 ②親の離婚 ③親の精神疾患 ④家庭内暴力の目撃 ⑤身体的虐待 ⑥精神的虐待 ⑦ネグレクト体験の7つのうち当てはまる数を合計した。
Amemiya, Airi, et al. "Adverse Childhood Experiences and Higher-Level Functional Limitations Among Older Japanese People: Results From the JAGES Study." The Journals of Gerontology: Series A 73.2 (2017): 261-266.
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