研究課題/領域番号 |
16K16634
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
野村 尚生 北海道大学, 薬学研究院, 特任助教 (90597840)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | がん創薬 / がんの分子機構 / タンパク質間ネットワーク / 小胞体 |
研究実績の概要 |
小胞体ストレスタンパク質であるEndoplasmic reticulum oxidoreductin 1α (ERO1α)は、正常細胞に比べ種々の癌細胞株で高発現している。過剰発現系およびRNA干渉を用いたノックダウン解析から、癌化に重要な役割を果たしているタンパク質であることが報告された。このERO1α誘導性の癌化は各組織で普遍的に起きている可能性が高く、このメカニズムの解明により新しい創薬シーズの発見や、最終的には癌幹細胞の撲滅・癌根治につながることが期待される。 ERO1αを有用な創薬標的と見なし、現在報告されている阻害剤を探索したところ、RonらによってERO1α阻害剤の報告がなされていた。この報告は酸化還元についてのみ言及しており、さらに低阻害能、高細胞毒性なために有効な阻害剤とは言い難かった。そこで、1万化合物ライブラリーからスクリーニングを行い、新規ERO1α阻害化合物を同定し、それらの構造展開からRonらの化合物よりも高い阻害活性および溶解性を有する阻害化合物HE-Iを得た。 ERO1α過剰発現しているSW480, MDA-MB231細胞を用いて、SP解析、増殖能解析をHE-I添加・非添加時の挙動を解析した。shRNAを用いたノックダウン細胞を作成し、さらに詳細に解析することで、HE-Iによる制癌作用を確認することに成功した。この機能発現がどのような機構によって発現しているか解析するため、次世代シーケンサーを用いたCAGE法、タンパク質間ネットワーク解析のためUPLC/MSを用いた相互作用タンパク質解析を実施している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ERO1αの発現量の多いヒト乳癌 MDA-MB-231 細胞およびヒト大腸癌SW480細胞を用いて、Dyecycle violetを用いたSP解析、ALDH発現量解析により目的細胞(SP-AF細胞)を調製した。この細胞を用いて、HE-I添加による制癌効果を解析した。この細胞群は薬剤排他能が高いため、元のがん細胞株と同様な挙動を示さず、増殖能を抑える効果は見られたが徐々に効果が減少することが判明した。タンパク質の発現パターンを解析するため、次世代シーケンサーを用いたCAGE法を行う。サンプル調製として、HE-I添加・非添加のSP-AF細胞、HE-I添加・非添加のERO1αノックダウンSP-AF細胞をは最後、mRNAの抽出を完了し、解析に進んでいる。また、直接的なタンパク質間相互作用を解析するため、UPLC/MS/MSを用いた相互作用解析を行う。大腸癌細胞株SW480を用いて、SP-AF細胞を調製し、SW480とそのSP-AF細胞間の発現タンパク質量を二次元電気泳動により解析した。
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今後の研究の推進方策 |
得られた関連タンパク質のmRNA塩基配列から、siRNAを複数作成し、関連タンパク質のノックダウンを行う。細胞はMDA-MB-231細胞株、SW480細胞株を用い、RNA干渉によりノックダウンされたERO1α関連タンパク質の腫瘍形成への効果を解析する。また、関連タンパク質のERO1αによる負の制御がある場合も考慮し、関連タンパク質発現プラスミドを作成し、ノックダウンと過剰発現を使い分けることによって細胞挙動を観察する。具体的には、①フローサイトメーター Gallios(Beckman Coulter)を用いて、コントロール細胞と比較することで細胞周期への影響を確認する。②腫瘍増殖能解析には細胞増殖試薬WST-1を用いた生細胞量の測定および創傷治癒スクラッチアッセイにより評価する。③報告例のあるHIF-1、VEGFやケモカインについてはWestern Blotting法やELISAの抗体アッセイにより、発現量の増減を確認する。以上の解析結果からERO1αによる癌化メカニズムの経路を解析する。 薬剤排他能への影響を解析するため、HE-Iと他抗がん剤との併用による効果を解析する。薬剤耐性はHoechst33342排出を解析することで評価する。HE-I添加や関連タンパク質の発現量増減により薬剤排泄能が低下していた場合、既存の抗癌剤でも有効に癌幹細胞を細胞死させる。そこで、Hoechst33342の排泄能が低下した細胞群へ、tubulin阻害剤;ノコダゾール、DNA Topoisomerase阻害剤;ドキソルビシンを添加し細胞死解析を行うことで薬剤耐性を無効化しているか評価し、多角的に癌幹細胞化のメカニズム解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
タンパク質発現パターン解析にマイクロアレイを計画していたが、より精度が高く、付加情報を得られるCAGE法に変更した。ノウハウを蓄積している理研ベンチャーに依頼していたが、納期が思った以上にかかり、時期をずらすことで、迅速な解析を以来可能であったためであり、さらに予算執行状況から、次年度に経理執行可能なように時期をずらした。
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次年度使用額の使用計画 |
計上していたマイクロアレイ消耗品をCAGE法の外注に切り替える。
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