研究課題/領域番号 |
16K16636
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
劉 成偉 北海道大学, 理学研究院, 助教 (60773801)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | indole diterpene / shearinine / sespendole |
研究実績の概要 |
本研究課題ではインドールテルペンの基本骨格酵素遺伝子と修飾酵素遺伝子に着目し、麹菌異種発現系を駆使した酵素機能解析と生物合成を検討した。本年度は、Penicillium janthinellumが生産するインドールジテルペンshearinineの生合成における特徴的な修飾酵素遺伝子の機能解析と、Pseudobotrytis terrestrisが生産するインドールセスキテルペンsespendole生合成遺伝子クラスター同定を行った。以下、その概略を示す。
① Shearinine生合成後期に関わる4つの酵素遺伝子(janQDOJ)を段階的に麹菌へ導入し、生合成中間体である13-desoxypaxillineの投与実験を行った。その結果、全ての中間体と最終産物であるshearinine Dを生産することに成功した。インドール環に連結した特徴的な6/5員環詳細な反応機構を調べるために、プレニル基転移酵素であるJanDとフラビン依存型酸化酵素JanOのin vitro解析を行うことで、JanDはジプレニル化を触媒すること及びJanOは酸化的環化反応を触媒することがわかった。以上の結果から、shearinine生合成における特徴的な6/5員環の構築機構を解明した。
② Sespendoleは糸状菌から初めて単離されたインドールセスキテルペンである。マクロファージの泡沫化を阻害することで、脂肪滴の形成を抑制する作用があるため、肥満や動脈硬化症の予防物質として期待されている。sespendoleの酵素合成へ向けて生産菌のドラフトゲノム解析を行い、候補遺伝子を特定した。本クラスターには、インドールジテルペンpaxillineの生合成における3種の骨格構築酵素群(paxCMB)と高い相同性をもつ遺伝子に加え、3種の酸化還元酵素遺伝子が存在していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、shearinineの生合成経路の解明に成功し、インドール環に連結した特徴的な6/5員環の構築機構を明らかにできた。これにより、インドールテルペン構造多様性の創出において重要なインドール環での修飾様式に対する新たな知見を得ることができた。また、インドールセスキテルペンであるsespendoleの生合成遺伝子クラスターを特定した。以上のことから、本研究は順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に引き続き、sespendoleの酵素合成へ向け、各酵素遺伝子の機能解析を進める。具体的には、①麹菌異種発現系を利用した生合成経路の特定、②インドール環での修飾反応を触媒する鍵酵素のin vitro解析を行う予定である。また、自然界では起こりえない組み合わせでの分子変換反応(炭素数15の基質に対してインドールジテルペンの生合成酵素遺伝子を作用させるなど)を人為的に再構築し、構造多様性の創出を検討する。
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