研究課題/領域番号 |
16K16638
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
井貫 晋輔 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 助教 (70736272)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | サイトカインバランス / NKT細胞 / CD1d / 糖脂質リガンド / 免疫調節 / 分子動力学計算 |
研究実績の概要 |
本研究において、多様な免疫調節を担う脂質抗原受容体の機能解析を行うため、ナチュラルキラーT (NKT) 細胞を活性化するCD1d受容体に注目し、免疫系におけるサイトカインバランスの制御を可能とする強力かつ選択的なCD1dリガンドの開発を目指している。 本年度は、所属研究室において以前までに見出しているアミド基を糖脂質リガンドの脂質部位に導入した脂質改変型リガンドを基にした構造展開により、強力なサイトカイン誘導活性を有するCD1dリガンド、および選択的なサイトカイン誘導活性を有するリガンドの創製を行った。誘導体を用いた構造活性相関研究から、上記の脂質改変部がCD1dの脂質認識部位に存在する特定の極性アミノ酸残基と相互作用することが示唆された。また分子動力学計算を用いた解析により、上記の脂質改変型リガンドとCD1d間の相互作用において、水分子を介した水素結合ネットワークの形成により、周辺部の水和状態を大きく改善することでリガンド-CD1d複合体を安定化していることが示唆された。以上のように、CD1dの脂質認識部位に存在する特定の極性アミノ酸残基が、親和性向上のための新たな作用点となることを見出した。本成果は単純な構造変換により脂質リガンドの活性向上が可能である事を示しており、脂質認識タンパク質に対する高親和性リガンド設計に重要な指針を与えると期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
脂質改変型CD1dリガンドを基にした構造展開は順調に進展している。特に合成に関して、安定した化合物供給を可能とする合成経路を確立したため、様々な官能基を有する脂質改変型リガンドの合成を達成した。また上記の誘導体の評価を行うことで、強力なサイトカイン誘導活性を有するCD1dリガンド、および選択的なサイトカイン誘導活性を有するリガンドを複数取得した。また分子動力学計算を用いることにより、水分子を介した水素結合ネットワークの形成が、リガンドとCD1d間の相互作用の向上に寄与していることを示唆する結果を得た。さらに、リガンドとCD1dとの間の結合親和性の新たな評価法を複数開発した。これらの評価データの解析を進め、検討を継続する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後も引き続き脂質改変型CD1dリガンドを基にした構造展開を継続する。特に共有結合型リガンドの探索に注力する。共有結合形成の確認は質量分析装置を用いて解析する予定である。共有結合型リガンドを取得次第、サイトカイン誘導活性に与える影響等を精査する。また前年度までに取得している選択的なサイトカイン誘導活性を有するリガンドの機能解析を行う。特に現在、Th2サイトカインを選択的に誘導するリガンドを取得しているため、これらの選択性発現メカニズムの解明を以下の手法を用いて行うことを計画している。①分子間相互作用解析により、CD1dとリガンド間の結合親和性を解析し、選択性発現との相関関係の取得を目指す。②フローサイトメーターおよび蛍光顕微鏡を用いて、リガンドおよびCD1d-リガンド複合体の細胞内挙動の解析を行う。また蛍光標識を導入したリガンドを設計、合成し、活性評価を行うとともに、その細胞内挙動の解析も併せて計画している。
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