研究実績の概要 |
本研究において、多様な免疫調節を担う脂質抗原受容体の機能解析を行うため、ナチュラルキラーT (NKT) 細胞を活性化するCD1d 受容体に注目し、免疫系におけるサイトカインバランスの制御を可能とする強力かつ選択的なCD1d リガンドの開発を目指している。 本年度は、これまでに見出している脂質改変型糖脂質リガンドのアシル鎖末端に様々な官能基を有するベンズアミド基を導入したリガンドを設計し、合成を行った。活性評価の結果、これらのリガンドはTh2サイトカインであるIL-4誘導選択性を示した。また分子動力学計算を用いてリガンドとCD1dとの間の相互作用の解析を行ったところ、ベンズアミド基とCD1dのPhe70との間に相互作用があることが示唆された。 研究期間全体を通じて、報告者は糖脂質リガンドの構造変換により、IL-4, IL-10, IL-17など様々なサイトカインに対する誘導活性を示すリガンドの創製を行った。特にIL-4選択的なリガンドに関しては、構造活性相関研究の結果、高活性かつ選択的リガンド取得のための分子設計指針を見出すことに成功した。また、細胞イメージングを用いた解析によって、IL-4選択的なリガンドが他のリガンドと比較して、特異な細胞内挙動を示すことを明らかにした。さらに、分子動力学計算を中心とした解析を行うことで、これらのリガンドとCD1dタンパク質との間の相互作用様式について、高活性を示すための鍵となる特定の分子間相互作用に関する知見を取得した。本研究で見出したサイトカインバランスを制御するリガンドは、自己免疫疾患等に対する治療薬シーズとしての展開が期待される。
|