研究実績の概要 |
本研究では、細胞間における細胞表面の糖鎖受容体と糖鎖を介した相互作用の可視化を目指し、糖鎖受容体に結合した際に蛍光を示す蛍光プローブの開発を行った。糖鎖受容体の中でもセレクチンを標的とし、以下2つのアプローチで取り組んだ。 (1)in silico による探索(2)合成したプローブライブラリーから蛍光応答を測定して探索 (1)では、セレクチンに対する結合力を上げるため、母骨格となる単糖に導入するペプチドやフラグメントライブラリーを、バーチャルスクリーニングによって探索した。そこで、トリペプチドライブラリー(39^3 = 59,319個)、およびZincデータベースの化合物ライブラリー(20,564個)を用いてセレクチンに対してドッキングシミュレーションを行った。その結果、セレクチンのCRD近傍の疎水性領域に結合可能性を示す化合物を見出した。これらの結果を元に、現在、単糖ユニットおよびGFP色素誘導体の複合体に、これらの見出された残基を適切なリンカーでつないだプローブの合成を進めている。 (2)では、単糖ユニットとGFP色素誘導体とペプチドの3者を結合させ、ペプチド残基を種々変えたプローブライブラリーを合成し、この中から良好な蛍光応答を示すプローブ探索を行った。まず、モデルレクチンとしてコンカナバリンA(ConA)を選択し、コンセプトの実証を行った。その結果、αマンノシドおよびGFP色素誘導体と2つのトリプトファン残基を導入したプローブにおいて、ConA添加時に最大で6倍の蛍光強度の増加を示すプローブ探索に成功した。 今後は、これら2つの方法を組み合わせ、標的レクチンに結合して蛍光を示すプローブの開発を目指す。さらに、細胞表面のレクチンに対するイメージング並びに、ディスプレイスメントアッセイを行い、他のリガンドが競合的に結合した際の消光を利用して、レクチンを介した相互作用を調べる。
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