研究課題/領域番号 |
16K16646
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
細川 貴之 東北大学, 生命科学研究科, 助教(研究特任) (30415533)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 前頭連合野 / 尾状核 / サル / 行動制御 / トップダウン / ボトムアップ |
研究実績の概要 |
本研究ではカテゴリに基づいて行うトップダウン的な行動制御と、そのような制御を必要としないボトムアップ的な行動制御が脳のどこにおいて実現されているかを調べるために、前頭連合野および線条体の機能を可逆的に阻害し、その機能を調べることを目指している。 サルに視覚刺激と結果(報酬または嫌悪刺激)を連合される記憶課題を行わせた。課題では、異なる視覚刺激4枚を1グループとして、2つのグループ(計8枚の視覚刺激)からなる刺激セットを作り、そのなかからランダムに選んだ1つの刺激をサルに提示した。各刺激グループは特定の結果を予告しており、サルは呈示された視覚刺激に基づいて報酬がもらえるか、嫌悪刺激がくるかを予測する必要がある。学習訓練が進むにつれ、サルは視覚刺激の弁別ができるようになった。その後、刺激と結果の関係を入れ替える逆転学習を導入した。逆転条件として、すべての刺激で結果の種類が入れ替わる全体逆転と、各グループ内で2枚の刺激だけ結果の種類が変わる部分逆転の2種類を設けた。全体逆転においては、すべての刺激で結果の種類が変わるので、1つの視覚刺激で結果との関係性が変化したことを経験すると、他の刺激も結果との関係が変わったことを予測し、行動を変えることができる(トップダウン的な行動制御)。一方、部分逆転においてはどの刺激において結果が入れ替わったのか予測することができないため、すべての刺激で結果との関係を確かめるまで正しい行動反応が分からない(ボトムアップ的な行動制御)。 サルがこの課題を行っているあいだに、前頭連合野外側部を反復経頭蓋磁気刺激法(repetitive Transcranial Magnetic Stimulation: rTMS)によって低頻度(1Hz)刺激を行った。低頻度rTMSはターゲット部位の脳活動を抑制することが知られており、可逆的に脳機能を阻害することができる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
サル2頭に行動課題を訓練した。サルがこの課題を行っているあいだに、前頭連合野外側部を低頻度rTMS刺激を行った結果、全体逆転の成績が障害されたが、部分逆転においては成績の変化は見られなかった。このことは前頭連合野がトップダウン的な行動制御に関係していることを示唆している。
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今後の研究の推進方策 |
今後、他の脳領域をrTMSで機能抑制したり、線条体など脳深部にムシモールを微量注入することで、ボトムアップ的な行動制御に関係する脳部位を見つける。
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