研究課題/領域番号 |
16K16651
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
續木 大介 首都大学東京, 人文科学研究科, 特任准教授 (50646346)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 乳幼児 / 拡散光イメージング / 参照脳 / DOT |
研究実績の概要 |
平成 30 年度は、成人脳アトラスにおいて設定した 2783 点の仮想的なアクティベーションポイントを、1. 確率的 DOT (Diffuse Optical Tomography) 、2. ADOT (Atlas-based Diffuse Optical Tomography)、3. 成人脳アトラスそのものを用いた通常の DOT とで再構成し、その結果について、ユークリッド距離による誤差の比較を行った。本研究で考案した 1. の確率的 DOT においては、誤差が 10.6±1.0mm、2. の ADOT においては、誤差が 17.5±2.5mm、3. の成人脳アトラスそのものを用いた DOT においては、誤差が 7.2±0.6mm となり、確率的 DOT の有効性が示された。これは、少なくとも成人の頭部を対象とした計測の場合には、確率的 DOT を用いることにより、被験者そのものの頭部構造情報を参照する DOT に近い精度でイメージングを実行できることを示唆している。 一方、乳幼児の頭部を対象とした確率的 DOT の実行においては、事前に解決しなくてはならない問題が明らかになった。その問題とは、乳幼児版確率的 DOT の実行において使用を想定していた 4D 乳幼児アトラス (Brigadoi et al., 2014) の頭表ランドマークの座標の妥当性である。4D 乳幼児アトラスにおいて両耳介点とされているランドマークが、耳介前点なのか、あるいは外耳孔の一部なのかという点に加え、後頭結節とされているランドマークを再現可能な形で定めるための手続きを明らかにした上で、乳幼児版確率的 DOT のモデルについて検討する必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
平成 30 年度の研究実施計画として予定していた、MNI 標準座標系に準拠した解剖情報ラベル AAL (Tzourio-Mazoyer et al., 2002), AAL2 (Rolls et al., 2015), LPBA40 (Shattuck et al., 2008) の乳幼児頭部アトラスへのマッピングが滞っている。その理由として、当初、解剖情報ラベルの乳幼児頭部アトラスへのマッピングの具体的な手続きとして検討していたアフィン変換を、直接用いることができない可能性が浮上したことが挙げられる。確率的 DOT で用いるアトラスは、複数の頭表ランドマークの座標を参照したアフィン変換によって、その形状を計測対象児の頭部へと近似させるが、4D 乳幼児アトラスにおける両耳介点と後頭結節の座標の解剖的な定義には、不明瞭な部分が見受けられる。そのため、これらの頭表ランドマークの定義について明らかにした上で解剖情報ラベルを乳幼児頭部アトラスへとマッピングし、その上で、確率的 DOT から参照できるように、システムに手を加える必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
本研究で開発する確率的 DOT は、複数の参照脳アトラスを用いて、光伝播のシミュレーションと計測箇所の画像再構成を行う手法である。この参照脳アトラスを、月齢および年齢に応じた乳幼児の頭部アトラスに置換することにより、最終的に乳幼児を対象とした確率的 DOT の手続きを確立することが可能になると考えられる。しかし、その実現のために、今後、1. 妥当な乳幼児頭部アトラスを作成するための、アフィン変換に基づいた適切なアトラス変形手続き、および、2. 乳幼児と成人の脳の構造ならびに解剖学的差異、の 2 点について検討する必要がある。1. に関しては、成人参照脳データセットにおける頭表ランドマークの分布と、乳幼児参照脳アトラスにおける頭表ランドマークの分布とを比較することにより、成人頭部を想定した従来の手法が乳幼児の頭部においても使用可能かを検討する。2. に関しては、乳幼児頭部の解剖情報を含む複数のテンプレート (Oishi et al., 2019) を参照することによって明らかにする予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2018 年度には、隔年で開催される国際学会大会 fNIRS (functional Near-Infrared Spectroscopy) 2018 が東京で開催され、研究代表者は、当該学会の実行運営を支えるローカルオーガナイザーおよびチューターの業務を兼任した。その結果として、研究遂行の時間が圧迫され、当初計画していた海外出張を実行に移すことができず、次年度使用額が発生した。 2019 年度は、前年度に予定していた海外共同研究者との共同研究を円滑に進めるべく、当該助成金は主に旅費として使用する予定である。
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