2019年度は、さらに必要と思われた文献調査、デリーとイギリスにおける現地調査を実施し、【主題B】と【主題D】について現地調査を終えた。 イギリス調査では、バーミンガムを拠点として、ダリト移民の生活調査、世代の異なる女性に焦点をあてたライフヒストリーの聞き取り、カースト団体活動の参与観察を行なった。注目点として、同時期の北インドで生起したラヴィ―ダーシー詩聖寺院の取り壊しに反対するダリトの抗議運動を受けて、イギリスでは、ダリト内のカーストの差異を超えた抗議活動が数週間にわたりロンドンで組織化された。また、シク教、パンジャーブ研究が近年盛んに行なわれているウォルヴァーハンプトン大学シク教、パンジャーブ研究センターで国際会議が開催され、代表者も参加した。現地の研究者と本研究のテーマについて助言をもらい、国際共同研究の将来的可能性についても意見交換を実施できたことは有意義であった。 インド調査では、新型コロナウイルスの影響を受けて、帰国日の変更を余儀なくされた。最新の文献資料を収集し、ダリトによる公益訴訟活動の状況をフォローアップした。【課題C】の追加調査として、給与未払いや労働環境の厳しさで苦境に追い込まれている清掃労働者の状況を把握するために、デリー市自治体清掃職員、労働組合の幹部にインタビュー調査を実施した。 成果発表として、International Convention of Asia Scholars (ICAS)の第10回大会において、「移民」をキーワードに他地域の研究者とパネルを企画し、成果報告を行なった。締めくくりとして、代表者が所属している東京外国語大学拠点南アジア研究センターと共催で研究会を開催した。ダリト以外のマイノリティの状況と比較して本研究を位置づけることができ、貴重なフィードバックを得られた。以上の成果をふまえて、英語の論文刊行にむけて執筆を進めている。
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