研究課題/領域番号 |
16K16660
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
伊賀 司 京都大学, 東南アジア地域研究研究所, 連携講師 (00608185)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 政治的スキャンダル / マレーシア / 権威主義体制 / 1MDB |
研究実績の概要 |
本年度は、ナジブ首相の1MDBスキャンダルの進行と1990年代末の元副首相アンワルのセックス・スキャンダルに関連する学会報告と論文の公表を行った。具体的な実績として、1MDBスキャンダル関連が、2017年8月の韓国東南アジア学会での報告①"Re-Authoritarianing Malaysia? Political Scandals and Problems of Accountability in the Post-Mahathir Era"、2018年3月に公表された②「活性化した社会運動と市民社会の変貌」、2018年3月に発表された共編著のなかの1章③「ナジブはなぜ失脚しないのか」であり、アンワルのセックス・スキャンダルについては④「現代マレーシアにおける「セクシュアリティ・ポリティクス」の誕生」、として結実している。①は2013年総選挙後のマレーシア政治の「再権威主義化」の実態をスキャンダルとアカウンタビリティの問題から浮かび上がらせており、本研究課題の重要な背景となる報告である。②は選挙制度改革運動として始まったブルシ運動を中心にポスト・マハティール期のマレーシアの市民社会の動向を明らかにしたが、その中で1MDBスキャンダル以後の政治と市民社会の関係の変化についても論じることができた。③では、ナジブ首相が1MDBスキャンダルの最中でなぜ首相職にとどまり続けることができるのかを明らかにした論考である。1MDBスキャンダルのアクターや政治的帰結の一部を論じた論考であり、本研究課題の中でも重要な位置を占める。④は1980年代以降の国家とLGBT運動について論じる中で、1990年代末のアンワルのセックス・スキャンダルがLGBT運動の活性化にもつながったことを指摘し、スキャンダルの政治的帰結に関する従来とは異なる視点を提示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1MDBスキャンダルに関する資料収集と予定していたインタビューを行うことができた。他にも1980年代以降のスキャンダルの概要についても資料収集やインタビューを通じてある程度の把握ができたため。
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今後の研究の推進方策 |
2018年度の第一の目標は、ナジブ首相が関与した1MDBスキャンダルを中心にその背景や原因を解説し、スキャンダルの政治的帰結の観点から2018年総選挙との関連性を指摘するための論文を執筆・投稿することにある。それと関連して、これまでに学会発表をしたスキャンダルとアカウンタビリティ関係の学会ペーパーを論文化することを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
2017年度は現地での書籍購入や資料収集を予想して物品費に多くの額を計上したが、京都大学やマラヤ大学でのオンラインを使った検索や資料収集が容易であったために、使用する額が大きく軽減された。 2018年度には現地のインタビュー調査の回数を増やすこと及び、関係者を日本に招待して公開セミナーを開催することの費用などとして使用することを予定している。
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