計画の最終年度では、計画作成当初には考えなかった事態が起こった。事例とするマレーシアで1957年の独立から史上初めての政権交代が起こった。そこで、計画していた研究計画を続けるとともに、新しく発生した事態にも対応するように研究を進めた。 前年から続けていたスキャンダルのデータの収集を続けつつ、現在それを使った公表論文の執筆に取り組んでいる。その最初の成果の一つとして、2018年の総選挙で1MDBスキャンダルとそれを引き起こしたナジブ前首相を野党側がどのように選挙戦で扱ったのかを論じた論文『2018年マレーシア総選挙における希望連盟のメディア・コミュニケーション戦術に関する研究』(「社会科学」(同志社大学))を執筆した。この論文は既に査読と修正を経て公表を待つ段階になっている。 他にも、本科研が目指したスキャンダルと政治体制に着目して現在のマレーシア政治を取りまとめようとする試みは、関連する領域でも成果を生んでいる。2018年6月の比較政治学会での報告「東南アジアにおけるホモフォビアと性的マイノリティの運動」、同年12月の東南アジア学会での報告「政治開放期マレーシアにおける都市住宅政策過程:BN体制下の住宅消費者運動の成功と限界」が該当する。これらの報告はスキャンダルを中心に据えたものではないが、近年のスキャンダルの展開を含むマレーシア政治の動向について論じたものであり、本科研とも関連が深い。これらの報告に基づく論文について、後者の都市住宅政策に基づくものは既に執筆済みで投稿と査読結果を待つ段階にある。前者の性的マイノリティに基づくものは、今年度後半には執筆論文が書籍の章の形で公表される予定がある。
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