研究期間の二年目にあたる今年度は、第一に、昨年度モンゴル国の歴史中央公文書館・国立図書館などにおいて収集した文献・史料の整理・分析を進めた。また、『万国公法』のモンゴル語訳についてはすでに紹介したことがあったが、さらに具体的ないくつかの政治用語についての分析を行い、論文としてまとめた。さらに、国際法の導入がモンゴルの近代史に与えた影響、特に外交交渉においてモンゴルの指導者が国際法に基づいて領土主権を確立しようと試みていたことなどについて、オックスフォード大学で開催された国際ワークショップにおいて報告した。 第二に、昨年度刊行した『モンゴル国の古来伝承を略記した書』を利用して、カナダのトロントで開催されたAssociation for Asian Studiesにおける報告などを基に、モンゴル国史編纂における翻訳文献の役割を指摘した論文を作成した。モンゴル国における古代史の古典である書籍において、『資治通鑑綱目』の満洲語訳からのモンゴル語訳がかなり引用され、そのことが歴史観にも少なからぬ影響を与えていたことが確認できた。この歴史観に対して、当時モンゴルの政治・文化に大きく関与していたソ連が、どのように、そしてどれほど影響していたのかが次なる課題となる。 第三に、1913年末にモンゴル国を訪れていたアメリカの外交官W.W.ロックヒルがモンゴル滞在中に書き記した手書きの日記の文字起こしをし、さらに彼に送られたモンゴル語の手紙とその英訳などについて分析を進めている。
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