研究課題
本研究の目的は、回族によるイスラーム復興運動の一環であった回族集住地域の景観のイスラーム化が、政府による少数民族地域の経済発展を目的とした観光開発と結びつき展開してきたプロセスを描き出し、そこで創出される観光活動を媒介とした民族関係の再編を明らかにすることである。前年度までの調査によって、沿岸部との経済的格差がみられる少数民族が集住する雲南省などの少数民族集住地域の経済発展および少数民族の国民統合を主な目的とした政府主導での民族観光開発が行われてきたことにより、従来非ムスリムが訪れることの少なかった回族集住地域に国内外から多くの観光客がやって来るようになってきた状況が明らかになってきた。ただし、現地の回族をはじめとするムスリムたちの間には、礼拝を行う宗教活動場所への観光客の訪問に対する反発がある一方で、この機会をイスラームを布教するために積極的に利用しようとする傾向もみられた。また、昆明市でのテロ事件を機に、民族観光を推進する傾向にあった中国政府が回族集住地域における民族観光を抑圧し始めた状況が明らかになった。しかし一方で、それにより知名度のなかった回族集住地域が耳目を集めることとなり、一層多くの非ムスリム観光客を集めている。2018年度は、さらに中国政府の当該地域での観光政策、宗教政策の実施状況を調査した。「イスラームの中国化」を推し進める現政権下において、民族観光をイスラームの布教の場として利用することはもちろん、民族観光自体もその実施が困難になりつつある状況が明らかになった。最終年度にあたる当該年度は、これまでの成果を国際会議や国内の学会や研究会での口頭発表、および英語論文、日本語共著として発表した。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うちオープンアクセス 1件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 1件) 図書 (4件) 備考 (1件)
イスラーム世界研究
巻: 12 ページ: 266-269
Proceedings: International Symposium "Ethnicities in China and their Interaction with Global Society in the era of BELT and ROAD INITIATIVE"
巻: 1 ページ: 22-34
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