これまでの調査から明らかになった課題をもとに、時間的な制約をふまえて調査テーマを調整・限定しながら、最終年度の調査を進めた。また、同時にこれまでの調査データを整理し、論文の執筆・投稿を行った。 (1)旅行会社や土産物販売など、観光関連ビジネス従事者へのインタビューや参与観察から、日中間の人的ネットワークを通じてモノや情報が流通し、中国人観光客の訪日への欲望が生成されていくプロセスを日中双方の社会文化的文脈から考察することが重要と考えた。なかでも、これまでの調査から、日中間ならではの「観光文化」が生成されているものとして、医薬品の消費、結婚写真をめぐるビジネスの展開に焦点を当てて、関係者への調査を進めた。 (2)日本文化人類学会、総合観光学会、東アジア人類学研究会、Critical Tourism Studies-Asia Pacificに参加し、文化人類学、観光研究、中国研究を専門とする国内外の研究者たちと研究交流を行った。 (3)これまでの調査データを整理して、論文の執筆・投稿を行った。①日中間の観光ビジネスにおけるサービスをめぐる価値の交渉について分析し、論文「観光ビジネスにおける日本的サービスの受け取られ方-中国広州市の日系・美高旅行社における異文化経営」にまとめた。本論文は、『企業経営エスノグラフィ』八巻惠子編(東方出版)に採録された。②中国人観光客による日本における医薬品消費の特徴を分析し、論文"Coping with Uncertainty: Consumption of Medicines by Chinese Tourists in Japan"にまとめ、Japanese Review of Cultural Anthropologyに投稿した(2020年9月刊行予定)。
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