研究課題/領域番号 |
16K16680
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
稲村 一隆 早稲田大学, 政治経済学術院, 准教授 (40726965)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | アリストテレス / 方法論 / 弁証術 / 定義 / 分類 / ソクラテス / プラトン / J. S. ミル |
研究実績の概要 |
研究実績として2018年度は研究成果を論文としてまとめ、学術誌で掲載の内定を得ることができた。 まずアリストテレスの政体分類の方法論に関して、彼の生物学での分類の視点や科学的知識観がどのように応用されているかを調査し、国家を要素に分解し、要素の違いから国家の種類の違いを説明し分類していることが明らかになった。さらにプラトン『国家』や『ポリティコス(政治家)』における政体分類の影響も調査した。こうした点は2018年7月に英国のオックスフォード大学で開かれた学会で発表し、論文をHistory of Political Thoughtに掲載することになった。 また古代ギリシアの弁証術が近代以降にどのように影響を与えたのかを明らかにするためにJ. S. ミルの方法論を調査した。特に着目したのは『自由論』第2章と『論理学体系』第4巻第4章の関係である。本研究ではミルの理解するソクラテス的知識観や方法論が自由主義社会の基礎であり、思想と討論の自由を擁護する基盤として弁証術の精神が必要であることを明らかにした。この点に関する研究成果は2018年5月に政治思想学会で報告すると同時に、論文をJournal of the History of Ideasに掲載することになった。 さらに思想史の方法論に関する調査をもとに論文を岩波書店の『思想』に掲載することになった。本研究は古代ギリシアの弁証術の発想に影響を受けているドナルド・デイヴィッドソンの認識論を活用し、クエンティン・スキナーの思想史方法論の問題点も指摘した。 また継続的な課題としてアリストテレスが互恵性としての正義の観念をどのように洗練させているか、という具体的な価値の論点を通して方法論の適用も考察した。この点についてはThe American Philosophical Associationの中部年次大会に招待された際に研究報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アリストテレスの方法論に関する論文を海外の有力な学術誌に掲載することができることになり、かつ近代での受容に関する論文も思想史の有力な学術誌に掲載することになったため、順調に研究成果をあげることができている。ただし研究成果を論文としてすでにまとめることができていながら海外の学術誌から掲載を認められていないものもあるので、こうした論文を公表することが課題である。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、海外の有力な学術誌に論文を掲載できるように研究成果をまとめることを主眼としたい。特にアリストテレスの『エウデモス倫理学』の方法論に関する論文は、海外の有力な研究書にすでに言及されているにもかかわらず、掲載内定を得られていないので、できるだけ早く掲載内定を得たい。またアリストテレスの方法論を受けて現代の倫理学方法論一般として考察することが最終年度の課題になっているので、この点に関する研究成果もまとめるようにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
国内学会に出張の予定があったが、日程の都合がつかず、科研費の研究を遂行するためには出張を取りやめるほうが効率的だと判断したため。次年度での学会出張費用として使用する予定である。
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