研究実績の概要 |
本年度は考古学,特に日本考古学における自然科学的手法と従来の考古学的手法の関係について,まず歴史的な経緯を考察する作業を行った.具体的には『考古学雑誌』と『考古学研究』という日本考古学における二つの主要な雑誌,また『人類学雑誌』や『考古学と自然科学』といった関連雑誌について,一定の基準にしたがい,自然科学的手法を用いた論文をピックアップし,それらを定量的に分析した.その結果,自然人類学が日本考古学において重要な影響を果たしてきたという従来の主張と一致しない結果が得られた.すなわち,自然人類学関係の論文は『人類学雑誌』以外ではほとんど見られず,またそうした自然人類学関係の論文は他の関連論文で引用されることもかなり少なかった.本研究の成果は早稲田大学先端社会科学研究所セミナー(2017/01/20)において「考古学的実践の哲学:日本考古学を例に」というタイトルで発表を行った.また現在,英文で論文を執筆し,その投稿準備中である. また実際の考古学研究に参加することで,上記課題はより効率よく,また多面的に遂行できると考え,古人骨データにもとづいた戦争の進化に関する研究を平行しておこなっている.こちらについてもいくつかの研究発表と論文を発表することができた.特に昨年度に引き続き,弥生時代の古人骨に関する論文が受理され(Nakagawa, T., Nakao, H., et al. 2017. Violence and warfare in the prehistoric Japan. Letters on Evolutionary and Behavioral Science, 8(1), 8-11. doi: 10.5178/lebs.2017.55),縄文時代から弥生時代にかけての暴力・戦争の頻度の歴史的変化を明らかにすることができた.
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