平成29年度の計画としては,(1)平成28年度における理論的・方法論的検討をさらに深化・発展させること,また(2)発掘現場に同行して,発掘という実践的知的営みを哲学的に考察すること,の二つを目的としてあげた. こうした目標を踏まえた上で,本年度具体的に行った研究成果としては,(1)についてはまず.特に日本考古学に焦点を合わせて,その歴史的・理論的考察を発展させた.より具体的には(a1)日本におけるプロセス考古学とポストプロセス考古学の導入に関する歴史的考察を論文化し,書籍として出版予定である(「プロセス考古学とポストプロセス考古学:考古学理論との対峙」阿子島香・溝口孝司(監修)『ムカシのミライ:プロセス考古学×ポストプロセス考古学』所収予定).次に,(a2)日本考古学における自然科学的手法の導入に関し,日本考古学の主要論文雑誌をいくつか量的に検討することで,どのような分野・大学・知的伝統がどのように関係しあい,日本考古学が自然科学的手法を取り込んでいったのかについて考察する論文を執筆した.この論文は現在再投稿を行い,審査中である(A quantitative history of Japanese archaeology and natural science:日本考古学と自然科学の量的歴史). また(2)の発掘現場における実践的知的営みの考察に関しては,鳥取県の遺跡発掘現場に同行して発掘作業を手伝いながら,発掘現場における考古学知識生産プロセスを考察した.
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