本研究では、推論の自然化へ向けた議論構築を行うために、幼児や動物における「言語なしの推論」を題材として哲学的な分析を行った。第一に、比較認知における暗黙の前提となっているモーガンの公準を批判的に検討し、幼児や動物への推論帰属に対する懐疑は弱体化可能であるということを示した。第二に、推論に関する「ミニマリスト・アプローチ」に基づき、言語なしの推論が否定関係や因果関係の把握とカテゴリー化能力によって支えられていることを明らかにした。第三に、これらの基礎能力を支えている神経基盤についての考察を行い、加えて、推論の神経ネットワーク解明のためのアプローチに関する提案を行った。
|