本研究は、現代の生殖補助医療技術の利用に関連する倫理的な諸問題に対して、徳倫理学的な視点から分析を加え、わが国におけるこれらの技術の利用や規制の在り方について検討し、加えて生命倫理学における徳倫理学的アプローチの体系化を試みることを目的としている。この全体の研究計画の中で、2021年度は①「個別の生殖補助医療技術に対する徳倫理学的な観点からの検討」と、②「生殖補助医療の倫理における徳倫理学的議論の体系化」、③「生命倫理学上の徳倫理学的議論の特徴を整理し、徳倫理学的な行為論について従来の研究を批判的に検討」に関する研究を行った。 本年は、これらの研究成果のアウトプットを積極的に進めた。特に本年は海外にこれらの議論を展開することができた意義は大きいと考える。まず、①②に関する研究として、臨床研究において胎児を被験者とすることの是非に関する生命倫理学的な検討を行い、その成果の一部をAmerican Journal of Bioethics誌上で”The Fetus as a Research Subject”として発表した。 また、①~③に係る研究のアウトリーチの一環として、『文部科学 教育通信』誌上で、2回にわたってゲノム編集や生殖補助医療に関する倫理的な議論を解説する論説「生殖補助医療・ゲノム編集(1):当たり前の欲望をかなえる新しい医療技術とどう向き合うべきか」と「生殖補助医療・ゲノム編集(2):ゲノム編集と研究の末に誕生する人間の生命について」を公表した。
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