研究課題/領域番号 |
16K16689
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
竹村 亮 日本大学, 商学部, 准教授 (70583665)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 論理学 / 証明論 / 図形推論 / heterogeneous reasoning |
研究実績の概要 |
本研究では、文・記号表現を対象としてきた論理学研究を拡張し、図形表現と文表現を組合わせたヘテロジニアス推論の分析を行う。さらに、インダクションやアブダクションといった非演繹的な日常的推論に基づくヘテロジニアス推論の分析を行う。とくに、ヘテロジニアスな日常的推論を、実際にわれわれが行う形に沿って形式化し、分析する。 1.本研究ではまず、図形(グラフ)を用いたヘテロジニアス推論であり、なおかつアブダクション等の非演繹的推論が頻繁に用いられる具体的なケースとして、経済学におけるグラフを用いた推論の分析を開始した。とくに、線形グラフに基づくヘテロジニアス推論の形式化を行った。(研究成果は国際学会Diagrams 2016にて発表した。) 2.シンタクティカルな推論規則によってセマンティックな妥当性の概念を定める証明論的意味論(Prawitz (1971))の完全性の概念について分析した。(研究成果はThe 3rd Asian Workshop on Philosophical Logic (AWPL 2016)において発表した。)証明論的意味論は、自然演繹の推論規則と証明の正規化過程に基づく意味論であり、証明論的妥当性の概念は、形式的体系における証明に限らず、より広い推論を対象とした「論証」へと応用される。本研究の中心的な形式化手法も自然演繹であり、図形を用いた推論に対してもその正規化過程を考察することにより、証明論的意味論を応用することが可能であると考えられ、今後さらに分析を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は、当初の予定通り、経済学におけるグラフを用いた推論の数学的形式化を行った。ただし、その分析は未だ不充分であり、現在引き続き分析を進めている。また、形式的体系における証明に限らない、より一般の推論を含む「論証」を対象とするPrawitzの証明論的意味論の分析を行った。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では今後、以下を並行して行っていく。 1.図形の認知的特性の証明論的分析:証明論的手法の中心的なものの一つが、証明の正規化定理である。証明の正規化定理は、どんな証明もそれと同じ結論をもつ正規形の証明に書き換えられることを述べる定理であり、とくに正規形証明は、そのシステムにおける証明の構造を特徴づけるものである。本研究で導入するヘテロジニアスシステムに対して、証明の正規化定理を確立し、そのシステムにおける証明の特徴づけ、および認知的特性の証明論的分析を行う。 2.図形の認知的特性に基づく計算論的分析手法の開発:本研究では、まずは通常の情報科学的な計算量分析を応用しながら、人間の計算能力に合った計算ステップやより細やかな計算量の階層を探求し、認知的特性に基づく計算論的分析手法の開発を目指す。 3.論理学教育等への応用:論理学が果たす役割の1 つは、われわれが行う推論の規範を与えることである。ただしそのためには、できる限りわれわれが実際に行っている推論に沿った形式化を行わなければならない。本研究でのヘテロジニアスな日常的推論の形式化では、これを目指しており、実現すれば従来の文表現のみに妥当する論法よりも、さらに現実的な推論に近く、また応用力のあるものとなる。さらに、図形の認知的特性の分析から導かれるその適切な使用法などと合わせて、とくに経済学におけるグラフを用いた推論をはじめとして、一般に科学的思考法や論理トレーニングへと応用できる。本研究におけるヘテロジニアスな日常的推論の形式化は、たとえば経済学で行われる推論の習得や、より一般に論理トレーニング等への応用が可能であり、それを積極的に試みていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた英文校閲費が不要になったり、入手不可能なことが判明した図書が複数冊あったりしたため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の英文校閲費や物品費として使用する予定である。
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