研究実績の概要 |
本研究の目的は、今世紀の国際社会で比重を増しつつある非対称戦争に注目し、そこで生じている戦争規則(戦闘員保護(区別)原理)違反をめぐり、その構造的要因を「戦争のジレンマ」状況にあるものとして位置づけたうえで、非対称戦争において要請される戦争倫理を解明することである。29年度は、戦争規則違反のありうる免責理由の妥当性を検証しつつ、非対称戦争における戦争倫理を構築することに着手した。具体的には、「戦争のジレンマ」状況における戦争倫理の一例として、Walzerの議論を分析対象としながら、最高度緊急事態において非戦闘員保護(区別)原理の違反が免責される余地を検証した。その成果の一端として、1)"Ethics in Asymmetric Warfare: Why War Conventions Are Regularly Violated?" Athens Institute for Education and Research, 15th Annual International Conference on Politics & International Studies (Titania Hotel, Greece), 12 Juneでは、非対称戦争において弱者が区別原理に違反することのありうる免罪理由とその是非を、必要性の観念に基づく「勝ち目への権利」論と「最高度緊急事態」論に照らして分析・評価した。加えて、2)「規範研究における実証研究の役立て方―反照的均衡を中心に」『政治思想研究』17号、98-123頁では、本研究課題である戦争倫理学も含む規範研究一般の方法論的特徴を、特に実証研究との接点に注目しつつ明らかにした。
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