研究課題/領域番号 |
16K16694
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研究機関 | 大谷大学 |
研究代表者 |
宮崎 展昌 大谷大学, 文学部, 助教 (70773729)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 写本一切経 / 版本大蔵経 / 石山寺一切経 / 増上寺 / 普超三昧経 / 阿闍世王経 / 訳注研究 / チベット語訳 |
研究実績の概要 |
今年度は,大蔵経の成立および変遷についての概説書(単著)を書き下ろしのかたちでまとめることになり,主にその執筆活動を行なったために,当初の計画どおりに研究を遂行することができなかった。けれども,大学生・一般以上を対象とする大蔵経に関する概説書をまとめることは漢訳大蔵経を主たる研究対象とする本プロジェクトとも密接に関わるものであり,アウトリーチ活動にもあたる。当該書籍は順調にいけば次年度中,おそくとも2019年度中には出版できる予定であり,本プロジェクトの主たる成果のひとつにもなりうる。 そうした単著書籍執筆の合間に今年度も写本調査と成果発表を継続し,一定の成果を上げることができた。 まず,写本調査に関しては,石山寺一切経について,石山寺綜合調査団のご協力のもと,夏と冬の大調査の折,2回にわたって閲覧・調査することができた。また,座主猊下より特別のご許可をいただき,綜合調査団団長の奥田勲先生のご協力もあって,奈良文化財研究所が撮影した画像を利用することができることになった。また,2月には増上寺の宋版,元版大蔵経の調査・撮影を関係各位のご協力のもとに行うことができた。 研究成果の発表としては,5月に国際仏教大学院大学・日本古写経研究所で開催された第1回公開研究会および8月にカナダ・トロント大学で開催された国際仏教学会(IABS)において研究発表を行った。ともに,竺法護訳『普超三昧経』に関して,これまで調査を行ってきた日本古写一切経と版本大蔵経について,主に異読の共有関係から明らかにできる諸本の系統関係に関して日本語と英語でそれぞれ口頭発表した。所属先の学内学会の研究例会では仏典に広く見られる「順忍」という術語に関する研究発表を行なった。また,『阿闍世王経』チベット語訳からの訳註研究として,第IV章および第XI章前半部分について,それぞれ雑誌論文のかたちで公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初の研究計画にはなかった,書き下ろしの書籍(単著)の執筆に従事したため。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画にはなかった単著書籍の執筆だが,現在およそ3分の2程度まで執筆を完了しており,順調にいけば次年度前半には脱稿できる見込みである。また,今年度閲覧を計画していたが,国際学会の開催期間と重複したために調査することができなかった醍醐寺の宋版一切経(福州・東禅寺版)については,次年度の夏に調査を行う予定である。そのあとは,遅れている『阿闍世王経』漢訳諸本の調査について,収集しえた写本・版本の異読を調査し,研究計画の遅れを挽回できる予定である。同経チベット語訳からの訳註研究の公表についても継続する予定である。ちなみに,次年度より所属先が変更になり,研究所勤務となったために,これまで以上に研究に専念でき,エフォート率を上げることができる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
石山寺一切経の調査の際,撮影費用等の使用を見込んでいたが,同寺綜合調査団は奈良文化財研究所の協力を得ており,当方で撮影費用等を負担する必要がなくなり,紙焼きの実費負担のみとなった。また,今年度は著書執筆に専念したために写本・版本の調査が滞り,その入力作業や確認作業を依頼することができなかった。次年度は醍醐寺の宋版一切経の調査を予定しており,その出張費や撮影費用に使用する予定である。また,これまでに収集しえた資料の調査を進め,その入力作業や確認作業を依頼して謝金支出することを予定している。
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