研究実績の概要 |
〈阿闍世王経〉漢訳諸本の大蔵経諸本資料の対校作業については、支讖訳『阿闍世王経』と失訳『放鉢経』に関して実施した。前者については、日本古写一切経6種(聖語蔵、中尊寺、石山寺、七寺、興聖寺、大門寺(巻下のみ))、版本大蔵経6種(宮内庁所蔵福州版、思渓蔵、普寧寺蔵、磧砂蔵、洪武南蔵、嘉興蔵)、後者については、日本古写一切経4種(金剛寺、石山寺、興聖寺、名取神宮寺)、版本大蔵経9種(高麗蔵(初雕本・再雕本)、金蔵、宮内庁所蔵福州版、思渓蔵、普寧寺蔵、磧砂蔵、永楽北蔵、嘉興蔵)を用いて調査を行った。異読の共有関係などをもとにそれらの系統についても分析を試みた。 蔵訳本『阿闍世王経』に関する訳注研究も継続し、第I章および第III章後半部分について公表した。あわせて、カンギュルの新出資料である、ブータン・カンギュル7種(Chizi, Dodedrak, Dongkarla, Gangteng, Neyphug, Phajoding I & II)についてはbam-po第1についての予備的調査を行い、Dolpo カンギュルについては全本対校を行った。 本年度実施した一切経・大蔵経に関する調査については、8月に醍醐寺宋版一切経、12月に名取新宮寺一切経の実地調査・撮影を行った。前者については、前年度に引き続くかたちでの実地調査を行ったが、それらを撮影した画像を頂くことはできなかった。後者については、所蔵者の協力もあって、報告者自らが撮影して、画像を入手することができた。これらの調査・検討は引き続き行う予定である。 先年来取り組んでいた、大蔵経に関する概説書『大蔵経の歴史-成り立ちと伝承』(方丈堂出版)を12月に公刊できた(昨年度の報告書にすでに記載)。あわせて、それに関連したエッセイと論説記事それぞれ1篇を公表した。
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