研究課題/領域番号 |
16K16695
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
根本 裕史 広島大学, 文学研究科, 教授 (00735871)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 中観思想 / 美文詩 / 宗教歌 |
研究実績の概要 |
本研究の主たる目的は、ツォンカパ・ロサンタクパ(1357-1419)以降にチベットで成立した中観文献・美文詩の内容と文体を精査することにより、チベットにおける中観思想と美文詩・宗教歌の融合が成立した過程と、分析対象とした作品群に見られるチベット人の宗派意識の実態を明らかにすることである。 当該年度は、第一に、チャンキャ・ロルペードルジェ(1717-86)の『見解の歌』をクンチョク・ジクメ・ワンポ(1728-91)の註釈に依拠して精読し、訳注とシノプシスを作成した上で、中観思想とその実践法を宗教歌の形で表現した本作品の特色を思想史・文学史の両側面から考察した。その成果を『比較論理学研究』第16号に発表した。 第二に、ツォンカパと同時代に活躍したサキャ派の学僧によってチベット語に翻訳されたサンスクリット詩『メーガドゥータ』の翻訳をめぐる諸問題を検討しながら、サンスクリット原典に忠実な新たなチベット語訳をギャイ・ジャブ教授(青海師範大学)と共同で作成し、その成果を単行本『迦梨陀娑《云使》訳注与研究』(扎布・根本裕史共著、中国蔵学出版社、2018年)として発表した。 第三に、ナーガールジュナの『根本般若中頌』、アーリアデーヴァの『四百論』、チャンドラキールティの『四百論釈』、テンダル・ラランパ(1759-)の『離一多性論』などに依拠して、インド中観思想からツォンカパ以後のゲルク派中観思想に至るまでの「恐怖と空性」の問題意識の変遷を明らかにし、その成果を『哲学』第70集に発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の目的であったチャンキャ・ロルペードルジェ作『見解の歌』の翻訳研究を完成させたことに加え、当該年度の研究計画にはなかった『メーガドゥータ』チベット語新訳の出版に至ったため。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題に挙げていたクンタン・テンペードゥンメ(1762-1823)作『具義讃』の解読・内容分析を進め、チベット仏教における中観思想と文学の融合に関する未解決部分についての考察を完成させる計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
発表を予定していた国際学会を事情によりキャンセルしたため。次年度参加予定の国際学会にかかる旅費、および研究謝金として使用する計画である。
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