チベット仏教ゲルク派の美文詩・宗教歌の内容・形式の分析を通じて、中観思想と文学の融合という視点から、チベット文化史の一側面を解明した。第一に、ゲルク派の創始者ツォンカパの『縁起讃』とその註釈文献を精査し、彼らの関心が中観派の修道論と詩的世界の構築に向けられていたことを明らかにした。第二に、ゲルク派の学僧チャンキャ・ロルペー・ドルジェの宗教歌『知見の歌』とその註釈文献を精査し、この歌に特徴的な「顕現と空性の連合」という思想がチベットにおける宗派間対立の融和につながっている点を明らかにした。さらに付随して、サンスクリット叙情詩『メーガドゥータ』のチベット語新訳を完成し、出版した。
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