研究課題/領域番号 |
16K16698
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研究機関 | 独立行政法人国立文化財機構京都国立博物館 |
研究代表者 |
上杉 智英 独立行政法人国立文化財機構京都国立博物館, 学芸部美術室, 研究員 (50551884)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 思渓版大蔵経 / 前思渓録 / 後思渓録 / 原本調査 / 台北故宮博物院蔵 / 中国国家図書館蔵 / 楊守敬 / 岩屋寺 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、思渓版大蔵経の目録である台北故宮博物院蔵南宋刊本(故宮本)の書誌学的研究、並びに故宮本と本来一具であった中国国家図書館蔵思渓版大蔵経の原本調査により、目録と現存状況の乖離の原因を究明し、思渓版大蔵経刊行の実態を実証的に解明することである。本目的を達する為、令和三年度は思渓版大蔵経に関して、下記の研究を実施した。 思渓版大蔵経の調査を予定していたが、実施できなかった為、当初計画していなかった大阪府観心寺所蔵の中尊寺経の借用・調査を実施した。中尊寺経とは平安時代十二世紀に書写され、岩手県平泉の関山中尊寺に納められた一切経である。観心寺への伝来時期や経緯は明らかでないが、奥州藤原氏の初代、清衡による紺紙金銀交書経(清衡経)一六六巻と三代、秀衡の発願とされる紺紙金字経(秀衡経)五〇巻が伝来している。思渓版大蔵経の本文系統、並びに日本への影響を考察する為に、これら二一六巻の調査を実施し、思渓版大蔵経の内容と比較検討する準備を行った。その一端を京都国立博物館名品ギャラリー「観心寺の中尊寺経」(2022.6.14~7.24)にて展示する予定である。 なお、思渓版大蔵経の日本への影響として、敬西房信瑞(?~一二七九)による『浄土三部経音義集』の編纂が既存のテキストと新たに宋より伝来したテキストの相違によるものであることに言及した(「書評:前島信也『敬西房信瑞の研究-鎌倉浄土教典籍論-』(法蔵館、2021)」『いとくら』第11号、国際仏教学大学院大学日本古写経研究所、2022.3)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症拡大の影響を承け、予定していた中国国家図書館、茨城県最勝王寺、愛知県岩屋寺等に所蔵される思渓版調査の中止等、当初の計画に変更が生じた為。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画の方向性に問題はないが、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を承け、予定していた調査が実施できていない。今後、調査が実施可能であれば 実施するが、調査が実施できないことも想定し、次善の計画として画像で代替できるものは、画像を入手し、それによって研究を遂行し、成果報告書を作成したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)新型コロナウイルス感染症拡大の影響を承け、予定していた調査の実施が叶わなかった為。 (使用計画)調査が可能であれば実施し、その費用に充当する。調査が叶わないようであれば、次善の計画として画像で代替できるものは、画像を入手し、それ によって研究を遂行する。その画像使用料に充てる。
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