本研究は、近代東アジア仏教界の交渉を背景とした元暁(617-686)認識にかかわる研究資料を分析し、その特徴、示唆などについて検討した。その結果として、1)元暁の主要著作から二門構造の設定のような論理展開の方法を分析し、近代以来の元暁理解が生み出した元暁思想に対する理解との差異を明らかにした。2)東アジアのそれぞれの国の歴史と仏教界の状況によって変化された元暁観について紹介した。3)全体的な元暁研究史を検討する上で、現代に至る元暁をテーマとする文学、芸術、映画、メディア、文化事業などの事例を検討し、近代における元暁再解釈が今日の元暁の大衆化に至大な影響を与えていることを指摘することができた。
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