研究課題/領域番号 |
16K16702
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研究機関 | 筑紫女学園大学 |
研究代表者 |
川尻 洋平 筑紫女学園大学, 文学部, 講師 (70712206)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ウトパラデーヴァ / アビナヴァグプタ / 再認識派 / 主宰神の再認識詳注 / 写本 / マージナルノート / pratibha |
研究実績の概要 |
1)シヴァ教再認識派写本の欄外註を網羅的に調査することに基づいて、アビナヴァグプタ以降のイスラム王朝下のカシュミールにおけるシヴァ教神学の伝承実態を解明すること、2)欄外註の網羅的調査から再構築される『主宰神の再認識詳注』に基づいて、ウトパラデーヴァが体系化した再認識派神学体系をアビナヴァグプタがどのような点で発展・精緻化させたのかを明らかにすることが本研究の目的である。具体的作業として、本年度は1)写本調査、2)欄外註の蒐集、3)『主宰神の再認識詳注』および『主宰神の再認識詳注に関する反省的考察』の文献学的研究を行った。 写本調査に関して、筆者が未調査であったウッジャインのScindia Oriental Research Instituteに所蔵されているシャーラダー写本を調査した。欄外註を豊富に含むシャーラダー写本は発見されなかったが、『主宰神の再認識偈』写本に他のシヴァ教神学文献からの混入が見られた。その文献について同定作業を行っている。またラクノウのAkhila Bharatiya Sanskrit Parishadを訪問し、『主宰神の再認識詳注』の断片を含む『主宰神の再認識偈および注』写本を撮影した。 欄外註の蒐集および『主宰神の再認識詳注』等の文献学的研究の成果として、『主宰神の再認識詳注』のディプロマティックエディションを公表した。またすでに公表済みの『主宰神の再認識詳注』断片を含めて、校訂テキストおよび翻訳を作成している。それに基づく成果の一部として、シヴァ教神学におけるpratibha解釈に関する研究発表を行った。アビナヴァグプタがpratibhaの解釈の中で強調する「主体への現出」は、ウトパラデーヴァが体系化した「認識と対象は認識を離れては存在しえない」というシヴァ教一元論を反映したものであることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
写本蒐集に関して、訪問前に予定していた写本の撮影を無事終わらせることができた。新しく入手した写本資料には、ほとんど欄外註は含まれていなかったが、入手済みの写本資料一本については欄外註のデータベース作成を終えた。また『主宰神の再認識詳注』および『詳注に関する反省的考察』の文献学的研究も進行しており、その成果に基づいて研究発表を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
シヴァ教神学文献に残された写本欄外註の形成過程を明らかにするために、欄外註のデータベース化作業を継続する。加えて、後代の注釈文献との関係についても検討し、欄外註と注釈文献との関係についても明らかにする。写本蒐集については、ベルリンなどヨーロッパの図書館に所蔵されている写本の調査を行う予定である。また『主宰神の再認識詳注』が豊富に回収される偈を優先して、『詳注に関する反省的考察』の読解を併せて行う方針である。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入予定であった書籍の納品が年度内に間に合いそうになく、購入を翌年度にすることにしたため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額分については、購入できなかった書籍の購入に使用することを計画している。
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