研究課題/領域番号 |
16K16703
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
高橋 沙奈美 北海道大学, スラブ・ユーラシア研究センター, 助教 (50724465)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ロシア / 宗教社会学 / ロシア正教 / 聖人崇敬 |
研究実績の概要 |
平成28年度は、ロシアでのフィールドワークを中心に、(1)モスクワ総主教庁による列聖のプロセスと聖人崇敬、(2)モスクワ総主教庁とエキュメニカル運動の2点を研究する計画であった。 (1)については、ロシア帝国最後の皇帝ニコライ2世一家の崇敬と列聖を中心に研究を進めた。2016年3月にモスクワで行った「列聖に関する聖宗務院委員会」の委員であるオレグ長司祭、イリヤ・グラズノフ絵画・彫刻・建築アカデミーのボリシャコフ教授に対するインタビュー調査、またエカテリンブルグで行ったニクーリン司祭、エカテリンブルグ郷土博物館学芸員ネウイマン氏および歴史家シートフ氏に対するインタビューと州立図書館で収集した文献を検討した。調査結果については、国内の研究会及び国際ワークショップで報告することができた。現在、報告内容を基に、論文として発表する準備を進めている。 また(1)について、帝政末期の君主主義的傾向の強かった司祭、クロンシュタットの聖イオアンももうひとつの事例として研究する予定を立てていた。これについては、Kizenko N. A Prodigal Saint: Father John of Kronstadt and the Russian People (The Pennsylvania State University Press, 2000)をはじめとする先行研究を収集・精読し、現地調査のための準備を進めた。 (2)のエキュメニカル運動については、先行研究を調査した結果、エキュメニカル運動の全体像を把握するためには、かなり広範囲にわたってアーカイブ調査をする必要があることが明らかになり、短期滞在の調査では不十分であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は、7月から1月まで産休・育休を取得した。産休・育休の前後も妊娠と育児の関係で、現地調査を計画通りに行うことは不可能であった。こうした状況にもかかわらず、前年度に行った現地調査での資料や、先行研究などの精読を通じて、意義のある研究を進めることができたと考える。 前期は事務が多忙であったことと、妊娠に伴う移動の制限のため、学会・研究会で研究成果を発表することは叶わなかったが、論文執筆や先行研究の精読に時間を充てることができた。 1月20日に育休から復帰した後には、本研究課題に関するものについては国内の研究会で1回、国際ワークショップで1回、研究成果を報告することができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、(1)ニコライ2世一家の列聖と崇敬に関わる学術論文の発表、(2)亡命教会における崇敬の実態と列聖のプロセスに関する現地調査を中心に研究を進めることを計画している。 (1)に関しては、学会などの場での成果報告を重ねることで議論を詰め、2017年末に刊行が予定されている論集“Dalnii Vostok, Blizkaya Rossia(遠き東、近いロシア)”に発表することを予定している。 (2)に関しては8-9月にかけてニューヨーク州のジョルダンビリー修道院およびサンフランシスコ主教区の資料館でのインタビュー調査および資料収集を予定している。調査の内容は、①1964年のクロンシュタットのイオアンの列聖およびその後の崇敬について、②本国モスクワ総主教庁のエキュメニカル運動が亡命教会にもたらした影響について、③1982年のニコライ2世一家の列聖をめぐる議論についてを予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度は、妊娠に伴う旅行制限と7月から1月にかけての育休・産休のため、予定どおり出張することが不可能であったため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度に、ニューヨーク州およびサンフランシスコへの出張旅費に充て、平成28年度にできなかった現地調査を行う予定である。
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