研究課題/領域番号 |
16K16704
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研究機関 | 秋田県立大学 |
研究代表者 |
鈴木 祐丞 秋田県立大学, 総合科学教育研究センター, 助教 (90749623)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | キェルケゴール / デンマーク / 実存主義 / キリスト教 |
研究実績の概要 |
平成29年度は、前年度にひきつづき、キェルケゴールの日記を中心とした研究を行った。日記NB16からNB20までを精読するとともに、関連する先行研究(ヨーキム・ガルフのSAK、ブルース・キアムセのEWKなど)を手がかりにして、1850年8月に『キリスト教の修練』の出版を最終的に決意する(NB20:120)に至るまでの、キェルケゴールの内面的変遷を考察した。 これらの研究の結果、次のことが明らかとなった。キェルケゴールは、1849年7月下旬の『死に至る病』出版以降も、『キリスト教の修練』の出版については逡巡をつづけていた。その要因は、『キリスト教の修練』という、デンマーク国教会を批判するとともに、理想的キリスト者を描きだす作品を出版するということが、彼に課すことになるさまざまな困難であった。キェルケゴールは、その逡巡の末に、「私が信仰によって救われているという事実が、私が尽力することを可能とする」(NB20:65)という考えに行きつき、この信仰観に背を押されて『キリスト教の修練』を出版するに至ったものと思われる。 平成29年度は、キェルケゴール協会学術大会において、平成28年度の研究成果を口頭発表した。また、ガルフの研究論文(彼のキェルケゴール研究の方法を論じたもの)を邦訳し、『新キェルケゴール研究』に掲載した。さらに、『死に至る病』の新訳を講談社学術文庫から出版し、その訳者解説において、本研究の方法論(日記に描き出されているキェルケゴールの信仰生活についての解釈をまず行い、それとの関連で彼の著作活動を理解するべきであり、それによりはじめてキェルケゴールという思想家の全体像を浮かび上がらせることができる、という考え)を一般読者向けに概説した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画通りに、キェルケゴールの日記を読み進め、またそれと彼の著作活動との関係を考察することができた。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、1850年以降のキェルケゴールの日記を読み進め、またそれと彼の著作活動との関係を考察していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入予定であった新規出版書籍の刊行が当初予定より遅れ、その購入のために予算を確保しておいたため。 当該書籍の購入にあてる予定。
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