行政文書を中心として近代の暦に関わる政策や制度の動向を通時的に把握する作業はおおよそ昨年度までに完了したので、平成30年度は行政文書では窺い知ることが難しい、実際に一般の人々に頒布をしていた頒布従事者等の動向や各地の頒布方法を掴む調査を行なった。頒暦には、時期によって異なるが、弘暦社、頒暦商社、頒暦林組、神宮教、神宮奉斎会、神宮神部署、全国神職会が関わったが、どのような経路で人々の手に暦を渡したのかは未解明な部分が多い。地方公文書館(30年度は秋田県公文書館と京都歴彩館などで調査を行なった)や国立歴史民俗博物館所蔵の吉川家文書(弘暦社、頒暦商社、頒暦林組の一であった)の史料調査も新たに行ない、それらの情報収集と把握に努めた。 近代の暦は、明治15年以降神宮大麻(以下、大麻)と一緒に頒布されるようになったように、大麻と強い関連を持つ。大麻の研究動向はもちろん、その頒布方法から頒暦方法をも窺い知ることができるため、併せて把握に努めた。
上記調査と平行して、研究成果の公表も行なった。9月の日本宗教学会では、大日本帝国憲法発布期までの編暦と頒暦についてパネル発表を行ない、未公刊であるがその成果を書籍の一論文として公表予定である。そこには、上記調査で得た、弘暦社、頒暦商社、頒暦林組、神宮教についての知見が含まれる。また昭和戦中期に戦前の頒暦数の最高値を達成するが、その背景について問う論文も執筆し、来年度に公表予定である。
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