研究課題/領域番号 |
16K16709
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研究機関 | 滋賀大学 |
研究代表者 |
藤岡 俊博 滋賀大学, 経済学部, 准教授 (90704867)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 贈与 / 利益 / 没利益 / レヴィナス / モース |
研究実績の概要 |
マルセル・モース『贈与論』の思想史的位置づけの検討をテーマとする本年度は、モースが「贈与」概念を提出するにあたって参照した可能性のある経済の社会学的分析についての歴史研究を行った。モースの『贈与論』は当該分野の記念碑的著作と目される一方で、それが経済社会分析において占める歴史的位置づけはいまだ不明瞭なままにとどまっている。そこで本研究はモースも寄稿している『社会学年報』を精査した。なかでも、『年報』グループの一人である経済学者フランソワ・シミアンが執筆した利子や資本をめぐる研究の書評の調査によって、「利益」/「没利益」や商業交換/贈与交換といったモース『贈与論』と同一の関心が両者のあいだで共有されていることが明らかとなった。同時に、モースとの関連が考えられる同時期の経済思想家の著作を分析し、『贈与論』と比較しうる論点の析出を行った。とりわけマックス・ウェーバーやヴェルナー・ゾンバルト、アンリ・セーといった論者のうちに、モースが継承した可能性のある「利益」概念が見られることを確認した。また、継続して行っている現代フランス哲学における「没利益」概念の研究に関しては、その中心人物であるエマニュエル・レヴィナスの思想について、これまでの研究において強調されてこなかった作家D・H・ロレンスとの主題的な関連を、公私にわたってレヴィナスとの関係が深かったジャン・ヴァールの著書の分析を媒介とすることで明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」に記したモース『贈与論』をめぐる歴史研究に関しては、まだ仮説の段階であり成果を公表できていないが、現代フランス哲学を主題とした研究に関しては口頭発表によって成果を公表することができた。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は研究課題の最終年度に当たっており、過去2年間で調査済みの内容を随時公表するとともに、課題全体の包括的なまとめを行うことで、今後の研究につながる見通しを得るように努める。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は海外での資料収集を実施せず、旅費の支出がなかったため、次年度使用額が生じている。最終年度にあたる次年度は、必要な図書資料の収集を中心に計画的な執行に務める。
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