本研究は、西洋思想史における「利益」およびその対抗概念である「没利益」をめぐる議論の展開を調査したものである。本研究は、「没利益」の概念をマルセル・モースが有名な論考「贈与論」で分析した「贈与」のトピックと関連づけるとともに、この主題がエマニュエル・レヴィナスやジャック・デリダといった現代フランス哲学者によってどのように扱われたのかを示した。本研究は、デリダの議論に対しておもに社会学や人類学から提起されてきた反論に哲学の側から応答することで、モースの「贈与論」をより広い思想史的文脈のもとで捉え直す視野が得られたと考えられる。
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