研究課題/領域番号 |
16K16711
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
森 新之介 早稲田大学, 高等研究所, 助教 (80638718)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 道統 / 華夷 / 神儒 / 愚管抄 / 帝王略論 / 冥顕 |
研究実績の概要 |
本年度は研究成果を論文2本と研究ノート1本、訳註1本、そして学会発表1回として公表した。また、来年刊行予定の事典の項目2つを担当した。 研究計画における個別研究c)「慈円『愚管抄』と虞世南『帝王略論』」としては、初年度に学会発表した内容を発展させて論文「虞世南『帝王略論』の聖人窮機論と九条兼実」を刊行した。本稿では、九条兼実が後白河院への申状に記した「聖人之道、察機応時」という文は、その数箇月前に読み合わされた虞世南『帝王略論』の聖人窮機論に由来することを論証した。 また、その研究過程で得られた知見を研究ノート「慈円『愚管抄』の冥顕論と道理史観」と訳注「慈円『愚管抄』巻第七今訳浅註稿」として刊行した。前者では、「冥とは目視できない世界のことであり、仏神と権者、怨霊、邪鬼の四つが冥衆だ」という通説を批判し、『愚管抄』に17例ある「冥」は、すべて仏神の意か、道理や作為、作用の冥然として知り難いことの意だと論証した。後者の訳註は、『愚管抄』の先行訳註にあった幾つかの問題を克服し、学界に便を供するために作成した。 また、a)「新儒学中心史観の形成過程」として、学会発表「江戸前期における道統論と儒家神道」を行い、初年度の学会発表と合わせて論文「江戸前期における道統と華夷、神儒――神代上古の叙述に着目して――」を刊行した。本稿では神代上古の叙述に着目し、江戸前期における華夷論や神儒論の多くは、自国意識を脅かす外来思想への自衛反応でもあったと見るべきであろうことを指摘した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
5つ設定した個別研究のうち、現在までに成果として公表できたものは前述の2つしかない。その原因としては、研究計画時には予期していなかった授業半期1コマと単発非常4回、事典2項目の依頼があったことと、最初に着手した前述の個別研究2つで計画以上の成果を出したことが挙げられる。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度となる次年度で、残りの個別研究3つのうち少なくとも1つは遂行したい。また、研究課題で得られた研究成果を統合し、全体像を描き出し方法論を打ち立てる仕上げの作業を行いたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
概ね研究計画に沿って使用したが、前述したように若干の遅れがあったため、交付額にも若干の残金が生じた。
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