研究課題/領域番号 |
16K16714
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
岡本 佳子 東京大学, 教養学部, 特任助教 (90752551)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ハンガリー / バラージュ / 音楽劇 / 舞踊 / 人形劇 / バルトーク / ルカーチ |
研究実績の概要 |
平成28年度はバラージュがブダペストで執筆・出版した作品や理論書について研究を行なった。本作業はバラージュの思想形成の土台を確認し、両大戦間期の亡命時代の作品や批評と比較する上で必要不可欠なものである。 本研究遂行によってバラージュの遺した多様な活動の一端が明らかになった。とりわけ当時交流のあった作曲家バルトークや哲学者ルカーチといった他の芸術家や思想家からの影響により、人形劇や舞踊劇、演劇評論など、多くの作品が生まれていることを示した。さらに内容を分析することで、バラージュが演劇理論を自身の創作実践を意識しつつ執筆した可能性を提示することができた。本年度の具体的な成果発表は下記のとおりである。 ・バラージュの作劇の実践と理論の関係性について、1918年に刊行された演劇理論書『ドラマツルギー』の記述と実際の作品『劇』(1917年)の比較を行う論文を査読付きの国内学術誌に投稿し、年度内に採択、掲載された。 ・ブダペスト時代の演劇論とウィーン時代の映画論との連続性についてスラブ・ユーラシア地域研究分野の国際会議で発表を行った。 ・これまで先行研究で言及されていなかった、もしくは書誌一覧に記載されていなかったバラージュの著作の書誌を日本語と英語でウェブ上で公開し、随時アップデートを行っている。 さらに、本テーマに関する日本語で刊行済みの拙論文に新たな知見を入れて改稿した上で国際学術誌に投稿しており、現在審査中である。なお当該の国際誌は日本語で出版された論文の翻訳、改稿論文の投稿を認めていることを申し添える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定では平成28年度の成果として査読付き論文の掲載とバラージュ作品の書誌公開を目指していた。実際にはこれらの成果に加えて、国際会議での発表および国際誌への論文投稿を行うことができている。しかしながら一次資料の読み込みに時間がかかっている部分もあるため「おおむね順調」と自己評価している。
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今後の研究の推進方策 |
本課題の最終年度である平成29年度は、当初の予定通りバラージュの亡命先のウィーンでの活動について研究を進める。バラージュは亡命先のウィーンでいち早く映画の芸術性を見出し、ドイツ語で評論を行なったとされる。今後は特にハンガリー語による演劇の理論と、『視覚的人間』を初めとするドイツ語による初期映画の理論を比較する。それにより、バラージュの言語や複数の芸術を横断した活動を、映画史や演劇史も含めたより広い文脈における芸術史に位置付けることを目指す。さらに平成28年度には国外研究者によって関連論文が発表されたため、現地図書館・文書館でのフィールドワークに加えて積極的に研究者との情報交換を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
論文投稿のための英文校閲費用について、参考文献一覧表が校閲対象から除外されたため当初予定よりも安価になったことによる。
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次年度使用額の使用計画 |
引き続き論文投稿のための英文校閲費用にあてる予定である。
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