研究課題/領域番号 |
16K16719
|
研究機関 | 京都教育大学 |
研究代表者 |
山内 朋樹 京都教育大学, 教育学部, 講師 (10769318)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | ジル・クレマン / ホベルト・ブルレ・マルクス / 動いている庭 / 惑星という庭 / 庭園 / ランドスケープ / ウィリアム・ロビンソン / ジョン・クローディアス・ラウドン |
研究実績の概要 |
初年度に引き続き、クレマンの庭園理論を具体的な諸アクター連関から捉え直す作業を進めた。二年目にはクレマンの仕事にも言及しており関係の深いブリュノ・ラトゥールの翻訳が進んだこともあり、科学人類学の動向を視野に入れながら研究を継続した。また同様に「惑星という庭」が初めて提案された『トマと旅人』および、庭師を複数のアクターのなかの「特権的アクター」として提示した『惑星という庭』の読解も引き続きおこなった。 また三年目にあたる来年度は、クレマンが直接言及しており、またクレマンの庭園構造の源泉と見なすことのできる18-19世紀イギリス庭園史、とりわけピクチャレスクおよびその後継であるガーデネスクとの影響作用史を確定する作業を開始した。具体的には、ピクチャレスクの伝統(バーク『崇高と美の観念の起源』、ギルピン『ワイ川紀行』、プライス『ピクチャレスク試論』)とそれを批判継承したガーデネスクの理論(ラウドン『造園百科』、『ガーデナーズマガジン』、『ヴィラの庭師』)をおもな検討対象とし、とりわけ「惑星という庭」の論理構造および作品構造との共通点となる点に絞ってイギリス庭園美学を「惑星という庭」の思想的源泉に位置づけた。 「惑星という庭」は同タイトルの展覧会の成功によって少なくともフランスでは人口に膾炙したが、その受容は自然保護論に偏向している。来年度の研究はこれらを是正したうえで近代イギリス庭園美学との関係を明らかにすることに主眼を置いた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
二年目にあたる今年度は昨年より予定していた海外での調査研究をふたたび見送ることになってしまったため、「惑星という庭」展の資料収集と再構成については計画から非常に遅れていると言わざるをえない。しかしながら三年目となる来年度は海外渡航が可能になる見込みが高く、海外での調査研究については準備も進めており、来年度重点的におこなうことを予定している。 しかしながら全体としてみれば、主要文献の分析、および関連文献の収集については着実に進展しており、大きな遅れはないと判断している。
|
今後の研究の推進方策 |
最終年度にあたる来年度は初年度、今年度同様クレマンの重要文献の分析を続けるとともに、フランスでの資料収集を重点的におこないたい。また、ポルトガル語文献が多く困難ではあるが、中心的課題のひとつであるブルレ・マルクスの研究に着手する。 最終年度も前年度までにえられた成果を引き続き発表していくとともに、引き続き影響作用史を検討し、歴史的知見を総合して「惑星という庭」の体系化を試みる。「惑星という庭」の美学的含意を明らかにすることで、クレマンの言う「共生」のありかたもまた美学的射程を持つものとして考察し直す必要があるため、クレマンによる「共生する人間」のテクストおよびデッサンを軸にこの概念を検討し、その内実を明らかにしたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当該年度も海外調査をとる十分な時間をとれなかったので未使用額が生じたが、来年度に集中しておこなうため、十分計画的に消化できる。
|