最終年度はこれまで同様、「惑星という庭」の影響作用史を中心に検討し、これまでの研究を参照しながら最終的な体系化を試みた。また、二年目にテクストを検討したピクチャレスク理論や、ラウドン、ロビンソンの庭園論についても、イギリスでの文献調査、関連遺跡、庭園群のフィールドワーク、撮影などの資料収集をおこった。この調査から外来種を積極的に使用し、おびただしい植物種を植栽するこれら庭園と「惑星という庭」の関連性を推定することができた。 固有種を扱うにもかかわらず「惑星という庭」において重要な位置を占めるブルレ・マルクスについてもテクストを中心に引き続き検討を進めた。ブルレ・マルクスがドイツ留学中の植物園でブラジルの固有植物群の美を認識した挿話に着目し、在来種にたいして外来種を見るかのような異化効果が働いていたことを指摘した。こうして「惑星という庭」の背景に「自然鑑賞における枠の設定」「観光による異化効果の利用」「異国の植物種の蒐集展示」という枠組みが含意されていることを理解することができた。 さらに、クレマンの「共生する人間」(2009)のテクストおよびデッサンを中心的に分析し、クレマンにおける「共生」概念について検討をおこなった。クレマンの他のテクストとの比較検討をおこなうことで、「共生」概念が一般的な循環的エコロジーを説くためのものというだけではなく、人間と自然が干渉するなかで生成する形態に注目する理論でもあることが明らかになった。
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