研究課題/領域番号 |
16K16720
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
前崎 真紗子 (山本真紗子) 立命館大学, 文学部, 非常勤講師 (70570555)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 日本美術 / 工芸 / 海外輸出 / 京都 / 近代 |
研究実績の概要 |
本年はこれまでの調査の結果の一部について、ドイツ・ベルリンで開催された国際シンポジウム“All the Beauty of the World The Western Market for non-European Artefacts(18th-20th century)” より招聘をうけ、近代の日本の美術品の海外流通について発表(なお、開催前に妊娠がわかったため渡航を断念し、主催者であるDr. Christine Howaldのご厚意により原稿を代読していただいた)。調査の成果を元に、明治~第2次大戦前を2期にわけ、それぞれの年代の日本美術輸出を池田清助と山中商会の活動を軸に論じた。同シンポジウムの内容は、後日オンラインにて公開が開始した〈https://lisa.gerda-henkel-stiftung.de/section_4_global_players?nav_id=6610〉。 また、今年度は明治工芸に関する展覧会が多数開催された。本研究が取り扱う明治工芸・輸出工芸についても、特別展「没後100年 宮川香山」展(サントリー美術館他3会場巡回予定)などの陶磁器のほか、「驚きの明治工藝」(東京藝術大学美術館他3会場巡回予定)も注目すべきものであった。これらの展覧会のうち、大阪歴史博物館開館15周年記念特別展「近代大阪職人(アルチザン)図鑑―ものづくりのものがたり―」(大阪歴史博物館、2016年4月29日~6月20日開催)については『民族藝術』33に展評を寄稿。ここ10年ほどの明治工芸・近代の輸出工芸に関する展覧会について概観し、同展が示した大阪の明治工芸の特徴を確認。今後の明治工芸・輸出工芸研究の視点について、従来の「産地」ごとの「成功物語」的なストーリーを追うだけでなく、史料を元に地域や個別の事例を掘り下げ分析していく必要性を指摘している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績でも触れたように、2016年度は本研究が取り扱う明治工芸・輸出工芸に関する展覧会が多数行われた。そのうちのいくつかを実見し、図録や関連資料を入手することができた。その位置づけと今後の研究の方向性については『民族藝術』誌上に展評を寄稿している。6月には横浜市において、サムライ商会創業者野村洋三に関する資料の調査や横浜の居留地・海外商社等の一次資料・関連文献の探索を行い、同市の三渓園や弁天通り等の巡見を実施した。 また、本研究の主要な調査対象である池田清助・浜田篤三郎の関係者から提供を受けた資料について、裏付け調査を実施している。池田が合同で会社を設立した浜田については、これまでほとんどその経歴がわからなかったが、川村範子(2015)によりその行跡の一部が明らかになった。本研究では、浜田の神戸時代の活動に加え、川村が調査していない京都での活動(仏教書出版と出版社設立)についての調査を行った。 なお、私事ではあるが、2016年10月に妊娠が明らかになったため、それ以降は遠隔地での調査や海外渡航は断念せざるを得なかった。2017年度も法令に基づき、一定期間研究を休止したのち、体調等の状況を考慮しつつ研究活動を再開する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
前述したように、2017年6月に出産を予定しているため、2017年度は体調を考慮し支障のない範囲での研究をおこなうこととなる。遠隔地への資料調査も難しいため、当初2017年度に予定していた海外調査は、2018年度以降の実施に延期したいと考えている。その代わりに、日本側に残る資料の調査や、遺族・関係者から提供を受けた資料の裏付け調査等を優先しておこなうこととする。在外邦人や在外商工業者に関する資料を調査し、池田らの活動の軌跡を追跡する作業をおこなう。 また、国立公文書館所蔵・前田正名資料など、以前は東京等の遠隔地で閲覧の必要があった資料の一部が、近年デジタル・アーカイブによりウェブ上で確認できるようになったものもある。そうしたツールも活用しつつ調査を進めていきたい。
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