研究課題/領域番号 |
16K16720
|
研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
前崎 真紗子 (山本真紗子) 立命館大学, 文学部, 授業担当講師 (70570555)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 近代 / 日本美術 / 工芸 / 輸出 / 池田清助 / 濱田篤三郎 / Thomas Joseph Larkin |
研究実績の概要 |
2018年度はこれまでの調査・研究内容をまとめた論文がドイツ・国内で発刊された。ドイツで発刊された論文は2016年度に開催された国際シンポジウム”All the Beauty of the World The Western Market for non-European Artefacts(18th-20th century)“での発表を書籍化したものである。研究代表者は、西洋と日本の美術商というテーマでの発表を依頼され、明治期の美術工芸品の海外輸出につき池田清助や山中商会といった具体的な事例をとりあげ、これまでの調査を踏まえながら論じた。また、国内で発刊された論文は、本研究の成果であると同時に、研究代表者が参加する科研費・基盤研究B「近代京都の美術・工芸に関する総合的研究-制作・流通・鑑賞の視点から-」)での研究成果でもある。こちらは、京都や海外でのこれまでの資料調査の結果に加え、池田清助やその協力者であるThomas Joseph Larkin のギャラリーの記事の調査をBritish Newspaper Archiveにて実施。そこからLarkinの経歴や、彼の運営したギャラリー the Japanese Gallery の展覧会などの情報を抽出し、これまであまり知られてこなかったLarkinの事績の一部を明らかにした。現在も引き続き、British Newspaper Archiveや各種のデジタル・アーカイブの調査を続行しており、調査対象である池田清助やその協力者であるThomas Joseph Larkin のギャラリーの記事を中心に抽出作業をおこなっている。 また、次の研究の進捗状況や今後の研究の推進方策にも記述するように、上記の論文執筆の過程で今後調査対象とする時期や資料の拡大の必要性を感じたため、現在資料の収集に努めているところである。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度の実績報告書でも記入したように、2017年5月に出産をしたことから、当初計画していた海外調査・国内調査の実施を中止した。そのため、調査の経費として計上した出張旅費などを執行することがなく、かなりの金額が残っている。2018年度は徐々に研究を再開しているが、上記の事情から申請時の計画とは変更しなければならない点も多かったため、ウェブ上のデータベースの使用を中心に現状にあった調査方法を用いつつ研究を続行している。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでの調査をまとめた論文化作業を通じ、今後調査対象とする時期や資料の拡大の必要性を感じた。具体的には、例えばThomas Joseph Larkinに関しては、林忠正宛書簡集にLarkinの書簡が含まれていることがわかったため、それらの調査をおこなった。また、Larkinがお雇い外国人として滞在していた明治4年(1871)から明治14(1881)年帰国までの事績を跡付けようと、彼が従事していた電信事業関連資料の調査をおこなった。しかしこちらは跡付けるような資料にまだ十分行き当らず、現在難航している。 また、これまでは主に池田らがロンドンに支店を出す明治14年前後を中心に調査をおこなっていたが、上記のLarkin林忠正宛書簡に明治35(1902)年のものが含まれることなどから、1900年代以降についても調査の対象をひろげることにした。ロンドンの代表的な日本美術商・山中商会が明治33(1900)年に支店を開設することから、山中商会との関連も含めて検討していきたいと考えている。当時のロンドンの状況を知る史料として、現在小林一三関連資料の使用を予定している。小林は阪急東宝グループの創業者であるが、日記や海外渡航時の記録が残されており著著も多い。今後はこれらの記事をまとめ、明治期半ばから大正期までの海外での日本美術品の商況や、美術商・コレクターらと当時の文化外交との関連を明らかにしていきたいと考えている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2017年度に出産をしたため、その前後に研究中断期間が生じた。また申請時には海外での調査を計画しておりその旅費を計上していたが、出産後海外渡航が難しくなったため、国内での調査などに切り替えた。2018年度より研究に復帰したが、現状に即してウェブ上のデータベースを使用するなど研究計画を再検討し実施している。次年度についても、データベース使用の調査をおこなうためその使用料金の執行や、新たな資料調査に関連する書籍代・旅費、資料整理のための関連費などを執行する予定である。
|