申請時の計画では海外での調査を計画していたが、本年度も新型コロナウイルス感染症により海外での調査が難しい状況となってしまった。そのため、ウェブ上のデータベースで公開されている資料や、国内での調査への切り替えなどをおこない、それに伴い調査の主なターゲットも国内での美術商の活動に変更した。 本年は、外国人向けの美術工芸品販売に関して、京都の山中商会についての聞き取りや資料の閲覧などを行った。また、外国人旅行者や外国人貴賓の旅行記などをもとに、京都の美術商への訪問や美術工芸品購入などについて調査をおこなった。その内容を2022年度より日本学術振興会特別研究員として開始した調査の内容とあわせて、明治時代の京都・東山地域の変化と関連付けて論じ、オンライン実施の研究会で発表した(京都大学人文科学研究所・第33回「近代京都と文化」研究班)。発表内容は2022年春に論文として寄稿する予定である。関連の成果として、山中商会について取り上げた雑誌記事への協力(『目の眼』インタビュー)と、明治時代の外国人旅行者による美術工芸品購入についての一般向け講座(大津市歴史博物館れきはく講座)も行った。 また、これまで続けてきた稲田賀太郎の手稿の翻刻については、翻刻作業は終わり内容の検討を行っている。翻刻内容は分量が多く全てを学会誌等に掲載することは難しいため、報告書などの形で公開ができるよう内容の整理をおこなっている。
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