本研究では1960年代のイタリアの芸術を、アメリカ型の資本主義社会の到来を背景とした、複数の文化間の葛藤の表現として考察することを試みた。とくに、ローマにおけるアメリカ美術の受容とイタリアの芸術家たちによるその変形について調査を進めた結果、彼らの作品には、アメリカのポップ・アートとの葛藤から生じたものがあることがわかった。またたとえば、南伊に古くから根付く呪術的儀礼のように、同時代のイタリアの芸術には、国際化の一方で、社会の均一化により失われていく地域固有の習俗や儀礼を取り込もうとした例が見受けられることを明らかにした。
|