研究課題/領域番号 |
16K16724
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
野村 悠里 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 助教 (70770288)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ルリユール / 製本 / 装幀 / デザイン / 箔押し / 工房 / 職人 / 保存 |
研究実績の概要 |
第二年度にあたる平成29年度は、第一に、装幀の実物資料の調査に基づいて、製本の構造的な分析に重点的に取り組み、製本術と装幀デザインの変容について検討することを行った。とりわけ、初年度で分類した製本工房のうち、革命以前から製本業を継続した工房、および19世紀に開業した製本工房を中心に、19世紀初頭から中庸における製本技術と箔押し工程の変化の過程を調査することを行った。また第二に、19世紀の製本技術書に関して、イギリス、オランダ等、他国との製本工程との相違に着眼しながら分析を実施した。初年度では、19世紀初頭を代表する科学者ルノルマン著『製本職人のためのマニュアル』、製本職人レネ著『ルリユールの歌』を中心に製本技術書を検討したが、本年度はさらに調査を進め、19世紀初頭に考案されていた「保存製本」という新しい製本形態について考察を行った。製本構造の綴じに着眼した拙著『書物と製本術―ルリユール/綴じの文化史』は、第39回日本出版学会賞(2017年度)奨励賞を受賞することができた。また、同書および論文「ルネサンス期のルリユールード・トゥの紋章本」(『日仏図書館情報研究』第40号)、「19世紀初頭のルリユール:王立聾学校製本教授マチュラン=マリー・レネによる「保存製本」」(同第42号)により、第8回日仏図書館情報学会奨励賞(2017年)を受賞することができ、製本術と装幀デザインに関する一連の製本史研究を大きく進捗させることができたと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成29年度は、初年度における製本技術書の分析を大きく進捗させ、他国との比較という視点で調査を発展させることができた。産業奨励会や万国博覧会における製本職人の活動についても資料収集に取り組むことができた点で、当初の計画より研究が進展している。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、平成29年度に行った製本技術書に関する分析をさらに進めると同時に、引き続き、19世紀以降における製本術および装飾デザインの変容を、実際の製本作品と比較検証して分析する。また、万国博覧会における製本職人の活動についても調査を継続して行う。
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